
信用取引の手数料と金利
信用取引で発生する主な費用
信用取引では、売買手数料以外にも複数の費用が発生します。
- 売買手数料: 新規注文や返済注文の約定時にかかる費用
- 買方金利: 信用買いで借りた資金にかかる金利
- 貸株料: 信用売りで借りた株式にかかる費用
- 品貸料: 制度信用売りで株不足時に発生する逆日歩
- 事務管理費: 建玉を一定期間以上保有した場合の管理費
- 権利処理手数料: 買建玉が権利確定日をまたぐ場合などにかかる費用
- 配当金相当額: 権利日をまたいだ売建玉で支払う金額
各費用の名称、料率、最低額、上限額は証券会社や信用取引の種類によって異なります。取引手数料が無料のコースでも、金利や貸株料まで無料になるとは限りません。
信用取引の金利は保有日数に応じて増える
信用買いの買方金利は、おおむね次の式で計算されます。
建玉金額 × 年率 ÷ 365日 × 計算日数
例えば、100万円の買建玉を年率3%で10日間保有した場合、概算金利は次のとおりです。
1,000,000円 × 3% ÷ 365日 × 10日 = 約821円
実際の計算では、新規建ての受渡日から返済の受渡日までを両端入れで数えることがあり、土日祝日も計算日数に含まれる場合があります。
買方金利は保有期間が長いほど増加します。株価が購入時と同じ水準でも、金利や手数料を含めると損失になる可能性があります。
信用売りでは貸株料と逆日歩を確認
信用売りでは、証券会社から借りた株式に対する貸株料がかかります。制度信用取引では、貸株需要が供給を上回ると逆日歩が発生する場合があります。
逆日歩の金額は売建時点では確定していません。過去に逆日歩が発生しなかった銘柄でも、次回は高額になる可能性があります。
信用取引の配当金はどうなる?
信用買いでは通常の配当金を直接受け取らない
信用買いで保有する株式は、利用者本人の名義で株主名簿に記録される現物株とは異なります。そのため、発行会社から通常の配当金を直接受け取るのではなく、権利確定日をまたいで買建玉を保有すると配当金相当額を受け取ります。
信用売りで権利確定日をまたいだ場合は、配当金相当額を支払います。配当金の支払時点ですでに建玉を返済していても、権利確定日をまたいでいた建玉には授受が発生します。
配当金相当額の割合や税務上の取扱いは、制度信用と一般信用、買建と売建、証券会社の取引条件によって異なります。
信用買いでは株主優待や議決権を取得できない
信用買いの建玉を保有していても、通常は株主名簿上の株主にならないため、株主優待や議決権を取得できません。
株主優待や議決権を得るには、権利付き最終日までに現物株を保有する必要があります。信用買いした株を現引きする場合も、権利取得に間に合う受渡日かどうかを確認してください。
信用取引残高とは?
未返済の買建玉と売建玉の残高
信用取引残高とは、信用取引で新規建てされた後、まだ返済されていない株数や金額です。
- 信用買い残: 返済されていない信用買いの残高
- 信用売り残: 返済されていない信用売りの残高
日本取引所グループは、一般信用と制度信用を含む信用取引現在高や銘柄別の週末残高を公表しています。また、規制銘柄や日々公表銘柄など、一部の銘柄については日次の個別残高も公表しています。
信用取引の買い残が多いとどうなる?
信用買い残は、将来返済売りや現引きによって解消されます。そのため、買い残が多い状態は、将来的な売り需要が増える可能性を示す材料の1つと考えられます。
ただし、買い残が多いだけで株価が下落すると断定することはできません。株価上昇によって買建玉の利益確定が進む場合もあれば、現引きされて市場で売却されない場合もあります。
買い残を確認するときは、単独の数字ではなく次の項目を合わせて見ます。
- 前週から買い残が増えたか減ったか
- 1日の平均売買高に対して残高が大きいか
- 発行済み株式数や浮動株に対して多いか
- 株価が上昇中か下落中か
- 制度信用の返済期限が近づいていないか
- 信用売り残とのバランス
- 増担保規制や日々公表の対象になっていないか
信用倍率だけで売買を判断しない
信用倍率は、一般的に信用買い残を信用売り残で割って計算します。
信用倍率 = 信用買い残 ÷ 信用売り残
例えば、買い残100万株、売り残20万株なら信用倍率は5倍です。ただし、一般信用売りの取扱状況や貸借銘柄かどうかによって、売り残の意味は大きく異なります。
売り残が少ない銘柄では信用倍率が極端に高くなるため、倍率だけを比較しても有効な判断にならない場合があります。
信用取引のデメリットと主なリスク
保証金を上回る損失が生じる可能性がある
信用取引では保証金を超える金額を取引できるため、相場が急変すると保証金以上の損失が発生する可能性があります。
特に信用売りでは、株価上昇の上限が決まっていないため、理論上の損失上限もありません。ストップ高が続くと買い戻せず、損失が拡大することがあります。
追証によって追加資金が必要になる
建玉や代用有価証券の価格が不利な方向へ動くと、予定していなかった追加資金が必要になります。期限が短いことも多く、資金を用意できなければ強制決済の対象になります。
保有中は費用が積み上がる
信用買いでは金利、信用売りでは貸株料が日数に応じて増えます。長期保有によって、利益が費用で減少したり、損失が拡大したりする可能性があります。
取引規制で新規注文や返済方法が制限される
取引が過熱した銘柄には、保証金率の引上げ、新規売り停止、現引き停止などの規制が実施されることがあります。証券会社が独自に建玉上限を引き下げる場合もあります。
注文を希望価格で成立させられない場合がある
ストップ高、ストップ安、売買停止、特別気配などにより、返済注文が成立しないことがあります。強制決済になっても、損失を限定した価格で約定する保証はありません。
信用取引のやり方
基本的な流れを6段階で確認
- 証券総合口座を開設する: 本人確認やマイナンバー登録などを行います。
- 信用取引口座を申し込む: 取引経験や金融資産などを申告し、審査を受けます。
- 取引説明書を確認する: 保証金率、追証、期限、手数料を確認します。
- 保証金を差し入れる: 現金または利用可能な代用有価証券を預けます。
- 新規買いまたは新規売りを注文する: 制度信用・一般信用の区分も選択します。
- 期限までに返済する: 返済売り、返済買い、現引きまたは現渡しを行います。
注文画面では、現物取引と信用取引を取り違えないよう、売買区分、信用区分、返済期限、株数、価格、執行条件を確認してください。
信用取引初心者が確認したい資金管理
取引可能額を全額使わない
保証金の約3倍まで取引できる場合でも、上限まで建玉を保有すると、小さな株価変動で保証金率が大きく低下します。
余力を残すことで、含み損、代用有価証券の値下がり、金利などによる追証リスクを抑えやすくなります。
損失を限定する基準を事前に決める
新規注文前に、株価がどの水準へ動いたら返済するか、損失額がいくらになったら取引を終了するかを決めておくことが重要です。
逆指値注文を利用しても、急激な相場変動時には指定した価格より不利な価格で約定する場合があります。注文機能によって損失が完全に限定されるわけではありません。
決算発表や重要日程を確認する
決算発表、業績修正、株式分割、TOB、上場廃止、配当権利日などの前後は、株価が大きく変動することがあります。
信用売りでは配当金相当額の支払い、信用買いでは名義書換料などが発生する場合もあるため、権利日をまたぐ前に費用を確認してください。
追証の連絡方法と期限を確認する
追証の連絡がメールや取引画面だけで行われる証券会社もあります。通知を見落としても期限が延長されるとは限りません。
口座開設後は、追証判定の時刻、解消期限、入金の反映時間、建玉返済による解消方法を確認しておきましょう。
信用取引を始める前のチェックリスト
- 信用取引は資金や株式を借りる取引だと理解した
- 保証金を上回る損失が発生する可能性を確認した
- 証券会社の最低保証金率と最低金額を確認した
- 追証が発生する保証金率を確認した
- 追証の解消期限と入金方法を確認した
- 制度信用と一般信用の違いを確認した
- 建玉の返済期限を確認した
- 買方金利または貸株料を確認した
- 売買手数料以外の諸費用も確認した
- 信用売りでは逆日歩の可能性を確認した
- 権利日をまたぐ場合の配当金相当額を確認した
- 取引可能額を使い切らず余力を残した
- 損失を限定する基準を事前に決めた
- 銘柄別の信用取引規制を確認した
まとめ: 信用取引はレバレッジより追証と総費用の理解が重要
信用取引とは、保証金を証券会社へ預け、購入資金や売却する株式を借りて行う取引です。手元資金を超える金額を取引でき、売りから取引を始められる一方、保証金を上回る損失が生じる可能性があります。
国内株式の信用取引では、売買代金の30%以上の保証金が基本ですが、証券会社や銘柄規制によって高い保証金率が設定される場合があります。保証金率が最低維持率を下回ると追証が発生し、期限までに解消できなければ強制決済の対象になります。
また、信用取引の費用は売買手数料だけではありません。信用買いでは金利、信用売りでは貸株料がかかり、制度信用売りでは逆日歩が発生する可能性があります。権利確定日をまたぐ場合は、配当金相当額や権利処理費用も確認が必要です。
信用買い残が多い状態は、将来の返済売りにつながる可能性を示しますが、それだけで株価の下落を予測することはできません。売買高、残高の増減、株価動向、返済期限、取引規制などを組み合わせて確認しましょう。
信用取引を利用する際は、最大取引可能額ではなく、相場が不利に動いても管理できる建玉額を基準にすることが重要です。注文前に保証金率、追証期限、返済期限、総費用を確認し、余力を残した資金管理を行ってください。
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