
現渡は、信用取引の売建玉を、同じ銘柄の現物株で返済する決済方法です。株主優待のつなぎ売りでよく利用されますが、「いつ注文すればよいのか」「現渡で利益はいくらになるのか」「PTSで手続きできるのか」「なぜ現渡できないのか」など、仕組みを理解しないまま操作すると権利を失ったり、余計な費用が発生したりすることがあります。本記事では、現渡の基本から現引との違い、SBI証券でのやり方・受付時間・手数料、株主優待で失敗しないタイミングまで、初心者にもわかりやすく解説します。

この記事の目次
- 現渡とは何か、読み方と基本的な仕組み
- 現渡と現引、買い戻しの違い
- 現渡で受け取る差額と利益の考え方
- 現渡を行うタイミングと注文手順
- SBI証券の現渡注文時間・手数料・注意点
- 現渡できない主な原因と解決方法
- 株主優待のつなぎ売りで失敗しないポイント
現渡とは?読み方は「げんわたし」
現渡は「げんわたし」と読み、信用取引の売建玉と同じ銘柄・同じ数量の現物株を証券会社へ引き渡して、借りていた株を返済する方法です。
信用売りでは、証券会社などから借りた株を市場で売却しています。通常は市場で同じ株を買い戻して返済しますが、すでに自分が保有している現物株を渡して返済することも可能です。この決済方法が現渡です。
日本取引所グループは、現渡しについて、信用取引による売付株券と同種同量の株券を証券会社へ引き渡し、借株を返済して、担保となっている売付代金を受け取る方法と説明しています。
現渡を簡単な例で確認
次の状態を考えてみましょう。
- A社の現物株を100株保有している
- A社の信用売建玉を100株保有している
この場合、現物株100株を使って信用売建玉100株を返済できます。現物株と売建玉は口座からなくなり、信用売りを行ったときの売付代金から貸株料などの諸経費を差し引いた金額が精算されます。
現渡では市場に買い注文を出さないため、その時点の株価で買い戻すわけではありません。信用売りの建値と、引き渡す現物株の取得価額が損益計算の重要な基準になります。
現渡と買い戻しは何が違う?
信用売りを終了する方法には、主に「買い戻し」と「現渡」があります。
| 比較項目 | 買い戻し | 現渡 |
|---|---|---|
| 返済に使うもの | 市場で新たに買い付けた株 | すでに保有している現物株 |
| 市場への注文 | 信用返済買い注文を出す | 市場には買い注文を出さない |
| 必要なもの | 買い戻しに必要な資金・余力 | 同一銘柄・同一数量の対象現物株 |
| 価格変動の影響 | 買い戻し時の約定価格で損益が変わる | 現物株の取得価額と売建値が損益に関係する |
| 決済後 | 売建玉がなくなる | 売建玉と引き渡した現物株がなくなる |
保有している現物株を今後も持ち続けたい場合は、現渡をするとその株を失うため、買い戻しのほうが目的に合うことがあります。反対に、現物株と売建玉を同時に解消したい場合は、現渡が便利です。
現渡と現引の違いは?方向が正反対
現渡とよく似た言葉に「現引」があります。どちらも信用取引を反対売買以外の方法で決済する手続きですが、対象となる建玉と差し出すものが異なります。
| 項目 | 現渡 | 現引 |
|---|---|---|
| 対象 | 信用売建玉 | 信用買建玉 |
| 差し出すもの | 同一銘柄・同一数量の現物株 | 買建代金と諸経費に相当する現金 |
| 受け取るもの | 売付代金から諸経費などを差し引いた金額 | 信用取引で買い付けた現物株 |
| 利用目的の例 | 売建玉と保有株をまとめて決済する | 信用買いした株を現物株として保有する |
「売建玉に株を渡す」のが現渡、「買建玉の代金を現金で支払って株を受け取る」のが現引と覚えると区別しやすくなります。
現渡の差額と利益はどう計算する?
現渡で口座に入る受渡金額と、投資全体の利益は同じではありません。受渡金額が大きく表示されても、その全額が利益になるわけではない点に注意が必要です。
現渡による利益の基本的な考え方
現物株を1株1,000円で100株購入し、その後、同じ銘柄を1株1,200円で100株信用売りしたとします。
- 現物株の取得価額:1,000円×100株=100,000円
- 信用売りの売建金額:1,200円×100株=120,000円
- 価格差による利益:120,000円-100,000円=20,000円
この場合、諸経費や税金を考慮する前の価格差は20,000円です。実際の損益では、現物株の取得手数料、信用取引手数料、貸株料、品貸料、配当落調整金などを考慮します。
反対に、現物株を1,200円で購入し、1,000円で信用売りして現渡すれば、価格差だけを見ると20,000円の損失になります。
SBI証券における現渡の受渡金額
SBI証券は、現渡の受渡金額を、原則として次のように案内しています。
売建値×現渡株数-諸経費-譲渡益税
ただし、この受渡金額は「利益額」ではありません。現渡に使用した現物株には購入時の取得価額があるため、投資全体の損益は、その取得価額を含めて確認する必要があります。
現渡は税務上、現物株の譲渡として扱われる
国税庁の通達では、信用売りを現渡で決済した場合、信用売りを行った際の約定金額により、現渡した株式を譲渡したものとして譲渡所得などを計算するとされています。取得価額は、引き渡した現物株の取得に要した金額を基に計算します。
特定口座の源泉徴収ありを利用している場合は、通常、証券会社が口座内の譲渡損益や税額を計算します。ただし、一般口座、複数口座、相続株、移管株などが関係する場合は扱いが複雑になるため、税務署や税理士などへ確認してください。



