
現渡できないのはなぜ?主な原因を確認
現渡ボタンが表示されない、エラーになる、注文が受け付けられない場合は、次の原因が考えられます。
同じ銘柄の現物株が不足している
現渡には、信用売建玉と同じ銘柄の現物株が必要です。売建玉が500株あるのに現物株が300株しかなければ、500株すべてを現渡することはできません。ただし、証券会社が一部現渡に対応していれば、300株分だけ現渡できる場合があります。
現物株が別の口座区分にある
信用取引口座と同じ証券会社で保有していても、預り区分によって現渡に使えないことがあります。SBI証券では、NISA預りで購入した株式は現渡の対象外です。
NISA口座の株を特定口座へ直接移して現渡することは通常できません。現渡に利用する予定がある場合は、購入時の預り区分を確認する必要があります。
現物株に別の注文が出ている
現物株に売却注文、移管手続き、貸株の返却処理などが入っていると、株数が拘束され、現渡可能数量が不足することがあります。未約定の売却注文がある場合は、注文状況を確認し、必要に応じて取消処理を行います。
売建玉に返済注文を出している
SBI証券では、返済注文中の建玉に対して現渡注文を出すことはできません。信用返済買いの注文が未約定で残っている場合は、取消可能かを確認したうえで、その注文を取り消してから現渡します。
予定委託保証金率が基準を下回る
SBI証券では、現渡後の予定委託保証金率が30.2%以上であり、同じ銘柄の現物単元株などを預けていることが、原則的な受付条件です。
現物株を現渡すると、保証金の代用有価証券として利用していた株も口座からなくなります。その結果、残っている信用建玉に必要な保証金を確保できなくなる場合があるためです。
保証金率が不足する場合は、入金や他の建玉の決済などが必要になることがあります。ただし、実際の対応は口座状況によって異なります。
現渡の注文時間外になっている
注文受付時間外、システムメンテナンス中、コーポレートアクションに伴う処理時間中は現渡できない場合があります。返済期限当日の操作では、時間切れや通信障害が致命的になるため、余裕を持って手続きしてください。
証券会社や取引所の規制がかかっている
取引所の規制、証券会社独自の規制、上場廃止や株式交換・合併などの企業行動によって、現渡が停止される場合があります。注文を受け付けた後に現渡停止となり、処理できなくなる可能性もあります。
現渡のメリット
市場で買い戻す必要がない
現渡では市場へ信用返済買い注文を出さないため、買い戻し注文の約定価格や流動性を気にせず、保有株で売建玉を決済できます。
ただし、現物株を別途購入するときには市場価格の影響を受けます。現渡を選ぶだけで価格変動リスクが完全になくなるわけではありません。
現物株と信用売建玉を一度に解消できる
同一銘柄の現物株と売建玉を同数保有している場合、現渡によって両方をまとめて解消できます。現物株の売却注文と信用返済買い注文を別々に出す必要がないため、操作を簡素化できます。
別々の市場注文による価格差を避けやすい
現物株の売却と信用返済買いを別々に行うと、注文が約定するまでに価格が動き、想定外の差額が生じることがあります。現渡では市場へ二つの決済注文を出さないため、そのような価格差を避けやすくなります。
株主優待のつなぎ売りを終了できる
現物買いと信用売りを組み合わせたつなぎ売りでは、権利取得後に現渡を行うことで、二つのポジションを解消できます。株価の上昇・下落による影響を相殺しやすい点が、つなぎ売りで現渡が利用される理由です。
現渡のデメリットと注意点
保有していた現物株を手放す
現渡後は現物株が口座からなくなります。今後も配当や株主優待を受けたい場合や、長期保有したい場合は、安易に現渡しないようにしましょう。
現物株の譲渡損益が確定する
現渡では、引き渡した現物株を譲渡したものとして損益が計算されます。信用売りの受渡代金だけを見て「利益が出た」と判断すると、実際の取得価額や税金を見落とす可能性があります。
貸株料などの費用はなくならない
現渡手数料が無料でも、現渡までに発生した貸株料や品貸料、配当落調整金などは精算されます。現渡をすれば完全に無料で取引を終了できるわけではありません。
税引き後の配当金と配当落調整金は一致しないことがある
つなぎ売りで権利日をまたぐと、現物株では配当金を受け取る一方、信用売建玉では配当落調整金を支払います。配当金と配当落調整金は税務上の扱いが同じとは限らず、税引き後の金額が完全には相殺されないことがあります。
株主優待の現渡で起こりやすい失敗
失敗1:権利付き最終日の終了前に現渡した
最も大きな失敗は、優待権利を取得する前に現物株を手放してしまうことです。現渡は、証券会社が案内する権利付き最終売買日の終了後、または権利落ち日に行いましょう。
失敗2:現物株と売建玉の株数が違う
現物株を100株しか保有していないのに、信用売りを200株行うと、100株分しか現渡できません。残りの100株は市場で買い戻すなど、別の方法で返済する必要があります。
失敗3:NISA口座で現物株を買った
SBI証券ではNISA預りの株式を現渡に使用できません。信用売りと組み合わせて現渡する予定であれば、対象となる預り区分を事前に確認してください。
失敗4:返済期限を過ぎた
一般信用短期売りや日計り信用には返済期限があります。現渡を忘れて期限を過ぎると、証券会社による強制返済となり、電話注文相当の手数料などが発生する可能性があります。
失敗5:信用売りの在庫が確保できなかった
一般信用売りは、証券会社が貸し出せる株数に限りがあります。人気優待銘柄は権利付き最終売買日より前に在庫がなくなることがあります。
一方、早く売建玉を作るほど貸株料の負担は増えます。在庫確保と保有コストのバランスを確認する必要があります。
失敗6:制度信用を使い、逆日歩が高額になった
制度信用売りでは、株不足の状況によって逆日歩が発生します。逆日歩の総額が株主優待の価値を上回る可能性もあるため、制度信用と一般信用の違いを理解せずに注文するのは危険です。
失敗7:現渡の受渡金額を利益だと思った
現渡で受け取る金額には、もともと保有していた現物株の価値が含まれています。現物株の取得価額と信用売りの建値、諸経費、税金をすべて確認して、実際の損益を計算してください。
失敗8:長期保有条件を見落とした
株主優待によっては、半年以上や1年以上の継続保有が条件です。毎回現渡して現物株を手放すと、株主番号が変わり、継続保有条件を満たせなくなることがあります。
つなぎ売りを行っても長期保有と判定されるかどうかは、企業の優待条件や株主名簿の確認方法によって異なります。企業の公式IR情報で条件を確認してください。
現渡注文前の最終チェックリスト
- 現物株と信用売建玉が同じ銘柄か
- 現物株と売建玉の数量が一致しているか
- 現渡に使える預り区分になっているか
- 現物株や売建玉に別の注文が入っていないか
- 信用売りの返済期限を過ぎていないか
- 現渡後も必要保証金率を維持できるか
- 貸株料や逆日歩などの諸経費を確認したか
- 株主優待が目的なら権利取得後のタイミングか
- 長期保有条件に影響しないか
- 現渡後の譲渡損益と税金を確認したか
現渡に関するよくある質問
現渡は何時に行うのがよいですか?
通常の決済では、返済期限と証券会社の受付時間内で、費用や保有目的を考えて行います。株主優待のつなぎ売りでは、権利付き最終売買日の取引終了後から権利落ち日に行うのが基本です。
現渡したらすぐに現金を使えますか?
注文が約定しても、すべての買付余力がただちに回復するとは限りません。SBI証券では、現渡の受渡代金は約定日の翌朝に諸経費などを反映して確定し、現渡に関係する余力の回復は受渡日になると案内されています。
現渡は一部の株数だけでもできますか?
証券会社が一部現渡に対応していれば可能です。SBI証券では、建玉の一部を指定して現渡できます。ただし、売買単位や現物株の預り状況によって注文できる数量が制限される場合があります。
現渡に株価は関係ありますか?
現渡時の市場価格で買い戻すわけではありませんが、引き渡す現物株の取得価額と信用売りの建値によって譲渡損益が決まるため、価格は損益計算に関係します。
現渡だけで利益を出せますか?
現渡は利益を生み出す投資手法ではなく、信用売建玉を返済する方法です。利益が出るかどうかは、現物株の取得価額、信用売りの建値、貸株料などの費用、税金によって決まります。
PTSの夜間に現渡できますか?
現渡はPTS市場へ出す売買注文ではありません。SBI証券では、16時以降の現渡注文は翌営業日扱いです。夜間PTSで売買できる時間であっても、同じ日付で現渡が約定するとは限りません。
まとめ|現渡は「同じ株を渡して信用売りを返す」決済方法
現渡とは、信用売建玉と同じ銘柄・同じ数量の現物株を証券会社へ引き渡し、借りていた株を返済する方法です。市場で買い戻す必要がなく、現物株と信用売建玉をまとめて解消できます。
現引とは方向が反対で、現引は信用買建玉の代金を現金で支払い、株を受け取る手続きです。現渡では現物株を渡し、信用売りの売付代金から諸経費などを差し引いた金額を受け取ります。
株主優待のつなぎ売りで利用する場合は、権利付き最終売買日の終了前に現渡してはいけません。権利を取得した後、証券会社が指定する時間に現渡することが重要です。
SBI証券では、営業日の0時から16時までの現渡注文が当日扱いとなり、16時以降は翌営業日扱いです。現渡の株式委託手数料はかかりませんが、貸株料、品貸料、配当落調整金などの費用は別途精算されます。
注文前には、銘柄、数量、預り区分、返済期限、保証金率、権利取得のタイミングを確認し、受渡金額と実際の利益を混同しないようにしましょう。
※本記事は2026年7月29日時点で確認できる公開情報を基に、国内株式の信用取引について一般的な制度を解説したものです。特定の取引、証券会社、銘柄の利用を推奨するものではありません。受付時間、手数料、返済期限、現渡条件などは変更される場合があるため、実際の注文前に利用する証券会社の最新ルールと契約締結前交付書面をご確認ください。
<参考サイト>日本取引所グループ(JPX)/国税庁/日本証券業協会/SBI証券



