
新株予約権はいつ課税される?ストックオプションの課税タイミング
新株予約権に関する税金は、どのような経緯で取得した権利なのかによって大きく異なります。特に役職員に付与されるストックオプションでは、税制適格か税制非適格かが重要です。
税制非適格ストックオプションの場合
国税庁によれば、税制非適格ストックオプションでは、一般に権利行使時と株式譲渡時の2段階で課税関係が生じます。
会社と付与対象者との雇用関係などに基づいてストックオプションが付与されている場合、権利行使時の経済的利益は原則として給与所得となります。
一般的な考え方は次のとおりです。
権利行使時の経済的利益=(権利行使時の株価-権利行使価格)×取得株式数
その後、取得した株式を売却すると、権利行使後に生じた値上がり分などについて譲渡所得の計算を行います。
ただし、誰からどのような理由で新株予約権を受け取ったのかによって、事業所得、雑所得など別の所得区分となる場合もあります。
税制適格ストックオプションの場合
一定の税制適格要件を満たすストックオプションでは、権利行使時の経済的利益に対する課税を株式の売却時まで繰り延べる仕組みがあります。
国税庁によると、税制適格ストックオプションの行使で取得した株式については、権利行使時の時価ではなく、原則として権利行使価額を取得費として扱い、株式を譲渡した段階で譲渡所得等として課税されます。
2024年度税制改正では税制適格ストックオプションの制度が拡充され、一定のスタートアップについて年間の権利行使価額の限度額が最大3,600万円まで引き上げられたほか、一定の場合に発行会社自身による株式管理も認められるようになりました。
ただし、税制適格となるためには複数の要件があります。単に会社が「税制適格ストックオプション」と呼んでいるだけで自動的に適用されるものではありません。
また、有償新株予約権、投資目的の新株予約権、相続した新株予約権などでは課税関係が異なります。個別案件については税理士などの専門家への確認が必要です。
新株予約権の仕訳・会計処理はどうする?
新株予約権の会計処理は、現金を対価として発行する新株予約権なのか、ストックオプションなのか、新株予約権付社債なのかによって異なります。
以下は仕組みを理解するための代表的なイメージです。実際の仕訳は発行条件や適用する会計基準によって変わります。
有償で新株予約権を発行した場合の基本イメージ
現金のみを対価として新株予約権を発行した場合、受け取った払込金額について、貸借対照表の純資産の部の「新株予約権」として処理することが基本となります。
発行時のイメージ
借方:現金預金 / 貸方:新株予約権
新株予約権が行使され、新株を発行した場合
企業会計基準の適用指針では、新株予約権の発行時に受け取った払込金額と、行使時に払い込まれた金額を、資本金または資本金・資本準備金へ振り替える処理が示されています。
概念的な仕訳イメージ
借方:現金預金
借方:新株予約権
貸方:資本金・資本準備金
資本金と資本準備金への具体的な振り分けは、会社法・会社計算規則等に基づいて決定します。
行使されずに失効した場合
現金を対価として発行された新株予約権が行使されず、行使期間の満了によって失効した場合、企業会計基準の適用指針では、失効した新株予約権に対応する額を失効が確定した会計期間の利益として処理します。
概念的な仕訳イメージ
借方:新株予約権 / 貸方:新株予約権戻入益等
勘定科目名や表示区分については適用する会計基準・会社の会計方針に沿って確認してください。
ストックオプションの会計処理
従業員等に対してサービスの対価としてストックオプションを付与した場合は、単純な有償新株予約権とは処理が異なります。
企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」では、企業が従業員等から取得するサービスについて、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、権利の行使または失効が確定するまで純資産の部の新株予約権として計上することとされています。
概念的には、対象勤務期間などにわたって次のような形で処理します。
費用計上時のイメージ
借方:株式報酬費用等 / 貸方:新株予約権
その後、権利が行使された場合には、行使部分に対応する新株予約権を払込資本へ振り替えます。
有償ストックオプションにも専用の会計上の取扱いがある
従業員等に権利確定条件付きの有償新株予約権を付与する取引については、企業会計基準委員会が実務対応報告を公表しています。
一定の条件を満たす取引については、従業員等から受けるサービスの対価としてストックオプション会計基準を適用することになります。
「有償だから株式報酬費用は発生しない」と一律に判断することはできません。
新株予約権付社債の会計処理はさらに複雑
新株予約権付社債では、社債部分と新株予約権部分の処理を考える必要があります。
企業会計基準では、転換社債型新株予約権付社債と、それ以外の新株予約権付社債で会計上の取扱いが分けられています。
転換社債型新株予約権付社債については一定の条件のもとで一括法または区分法が示されており、それ以外の新株予約権付社債については、原則として社債の対価部分と新株予約権の対価部分を区分して処理します。
金額が大きく、決算数値への影響も大きくなりやすいため、実際の処理では最新の企業会計基準・適用指針を確認することが重要です。
新株予約権の評価・算定はどう行う?
新株予約権には将来株式を取得できる権利として経済的価値があるため、有償発行、ストックオプション、第三者割当などでは適正な評価額の算定が重要になります。
単純に「現在の株価-行使価格」だけで、新株予約権の価値を正確に算出できるわけではありません。
新株予約権には、将来株価が変動する可能性や、権利を行使できるまでの期間などにも価値があるからです。
代表的な評価モデル
企業会計基準委員会は、株式オプションの価格算定モデルの例として、次のような手法を挙げています。
- ブラック・ショールズ式
- 二項モデル
ストックオプション等の評価では、一般に次のような基礎数値が重要になります。
- 評価時点の株価
- 行使価格
- 株価変動性(ボラティリティ)
- 予想残存期間
- 予想配当
- 無リスク利子率
- 権利行使条件やその他の契約条件
例えば、同じ行使価格でも、株価の変動が大きい企業の新株予約権と、株価がほとんど動かない企業の新株予約権では、オプションとしての価値が同じとは限りません。
未上場会社では株式そのものの評価も必要
未上場企業の場合、市場で日々取引される株価がありません。そのため、新株予約権を評価する前提として、まず自社株式の価値を合理的に見積もる必要があります。
事業計画、財務状況、類似会社との比較、直近の資金調達価格など、複数の要素が関係します。
さらに、税務上の株価評価と、会計上の公正価値、会社法上の有利発行該当性を検討するための評価では、目的が異なる場合があります。「一度算定した株価をすべての目的にそのまま使える」とは限りません。
新株予約権を見るときに確認したい7つのポイント
上場会社の開示資料やスタートアップの資本政策で新株予約権を確認する場合、最低限、次の項目を分けて見ると理解しやすくなります。
- 1.誰に発行するのか:役職員、投資家、金融機関など
- 2.発行目的:人材インセンティブ、資金調達、融資との組み合わせなど
- 3.有償か無償か:新株予約権取得時に払込みが必要か
- 4.行使価格:株式取得時にどの程度の負担が必要か
- 5.行使期間・行使条件:いつ、どの条件で行使できるか
- 6.潜在株式数:全て行使された場合、株式数がどの程度変化するか
- 7.資金使途:調達資金を何に使用する予定なのか
特に上場株式については、「新株予約権を発行した」という事実だけで判断せず、潜在株式数、希薄化率、行使価額、行使価額の修正条件、割当先、資金使途などを合わせて確認することが重要です。
まとめ|新株予約権は「権利・株価・税金・会計」を分けて考えると理解しやすい
新株予約権とは、一定の条件に従い、将来その会社の株式を取得できる権利です。役職員へのストックオプションだけでなく、第三者からの資金調達、新株予約権付社債、新株予約権付融資など幅広い用途があります。
新株予約権を理解するときは、まず「新株予約権そのものの発行」と「実際の権利行使」を分けて考えることがポイントです。
新株予約権が発行された段階では直ちにすべての潜在株式が株式になるとは限りませんが、行使されれば株式数や既存株主の持分に影響する場合があります。そのため、株価への影響を見る際には希薄化だけでなく、行使条件や資金使途まで確認する必要があります。
また、ストックオプションの税金は、税制適格・税制非適格などによって課税タイミングが異なります。会計についても、通常の有償新株予約権、ストックオプション、新株予約権付社債では処理が異なります。
登記についても、発行時と行使時で手続時期の考え方が異なるため注意が必要です。
新株予約権は契約条件によって法務・税務・会計上の結論が大きく変わります。実際の発行、行使、申告、登記、評価を行う場合は、最新の法令・会計基準を確認したうえで、必要に応じて司法書士、税理士、公認会計士、弁護士など各分野の専門家に確認してください。


