
第三者割当増資の価格はどう決める?
第三者割当増資では、会社法199条に基づいて1株当たりの払込金額またはその算定方法を定めます。
特に重要なのが、割当先へ不当に有利な価格で発行していないかという点です。
上場会社では市場株価が重要な基準になる
上場株式には市場価格があるため、取締役会決議前の株価などが発行価格を検討する重要な材料になります。
日本証券業協会の「第三者割当増資の取扱いに関する指針」では、第三者割当増資における払込金額について、原則として取締役会決議日の直前日の価額に0.9を乗じた額以上とする考え方が示されています。
ただし、「10%以内のディスカウントなら会社法上必ず適法」「10%を超えれば必ず違法」という意味ではありません。市場価格の状況や算定方法、発行時の事情などを踏まえ、有利発行に該当するか個別に検討する必要があります。
非上場株式では株価算定がより重要
非上場会社には証券市場で形成された株価がありません。そのため、会社の純資産、収益力、類似会社との比較、将来の事業計画などを基に株式価値を検討する必要があります。
特に同族会社などで著しく有利・不利な条件による増資をすると、会社法だけでなく、後述する贈与税など税務上の問題につながる可能性があります。
第三者割当増資をすると株価はどうなる?
第三者割当増資を発表したからといって、株価が必ず下がる、あるいは必ず上がるという法則はありません。
市場では、発行規模、発行価格、資金使途、割当先、業績、財務状態、提携による将来効果などさまざまな情報を踏まえて株価が形成されます。
株価のマイナス材料として意識されやすい要因
- 新株発行による既存株主の希薄化が大きい
- 市場価格より大幅に低い価格で発行される
- 資金使途が十分に明確でない
- 繰り返し増資が行われている
- 将来、追加で大量の株式が市場に出る可能性が意識される
プラスに評価される可能性がある要因
- 資金調達によって財務危機が改善される
- 成長投資のための資金を確保できる
- 有力企業との資本業務提携につながる
- 調達資金によって将来利益の拡大が期待される
つまり、第三者割当増資そのものが「悪材料」なのではありません。既存株主が受ける希薄化という負担に対して、調達資金による企業価値向上がどの程度期待できるかが重要です。
なぜ第三者割当増資が「悪材料」といわれることがある?
最大の理由は希薄化です。
たとえば、会社の利益が1億円、発行済株式が100万株だったとすると、単純計算の1株当たり利益は100円です。
その後、新たに25万株を発行し、利益が1億円のままなら、発行済株式は125万株となり、単純計算の1株当たり利益は80円となります。
実際には増資資金を使って将来利益が増える可能性があるため、この計算だけで株式価値を判断することはできません。しかし、増資直後には「株式数が増える」という事実が生じるため、既存株主にとって希薄化は重要な確認事項となります。
第三者割当増資の希薄化率はどう計算する?
東京証券取引所では、第三者割当に関する企業行動規範において、希薄化率を次の算式で計算します。
希薄化率 = A ÷ B × 100
- A:第三者割当により割り当てられる募集株式等に係る議決権数
- B:募集事項決定前の発行済株式に係る議決権総数
希薄化率25%の計算例
増資前の議決権総数が10,000個で、新たな第三者割当により2,500個の議決権が発生するとします。
2,500 ÷ 10,000 × 100 = 25%
この場合、東証ルール上の希薄化率は25%です。
なお、「希薄化率25%」とは、既存株主の持株比率が一律25%減るという意味ではありません。増資前10,000に対して2,500が加わると増資後は12,500となるため、増資前株主全体の割合は増資後に80%になります。
この違いは混同しやすいため注意が必要です。
東証では希薄化率25%以上に特別なルールがある
2026年8月時点の東京証券取引所の上場制度では、上場会社の第三者割当について、次のいずれかに該当すると原則として所定の手続きが求められます。
- 希薄化率が25%以上となる場合
- 支配株主が異動することになる場合
この場合、原則として、経営者から一定程度独立した者から第三者割当の必要性・相当性に関する意見を取得するか、株主総会決議などによって株主の意思を確認する手続きが必要となります。
重要なのは、「希薄化率25%以上なら必ず会社法上の株主総会決議が必要」という意味ではないことです。これは東京証券取引所の上場制度上、独立した第三者の意見取得または株主意思確認などを求めるルールです。
希薄化率300%超はさらに重大
東証では、第三者割当による希薄化率が300%を超える場合、株主や投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除き、上場廃止の対象となります。
第三者割当増資とワラントは同じ?
同じではありません。
一般に「ワラント」と呼ばれる新株予約権は、あらかじめ定めた条件で将来会社の株式を取得できる権利です。
株式の第三者割当
新株そのものを割当先に引き受けてもらい、払込みが行われれば新たな株主が誕生します。新株発行であれば、その時点で発行済株式数が増えます。
新株予約権の第三者割当
特定の第三者へ新株予約権を割り当てます。新株予約権を発行しただけでは、通常、その目的となる株式がすべて発行済株式になるわけではありません。割当先が新株予約権を行使すると、条件に応じて新株発行または自己株式の交付が行われます。
そのため、新株予約権では将来発生する可能性がある株式数、いわゆる潜在株式による希薄化も確認することが重要です。
東証の第三者割当に関する希薄化率の計算でも、新株予約権の行使等により交付される株式に係る議決権数が考慮されます。
行使価額修正型の新株予約権にも注意
新株予約権の中には、株価などに応じて行使価額が修正される設計があります。行使状況によって実際の資金調達額や発行株式数、時期などが変化することがあるため、通常の新株による第三者割当とは分けて内容を確認する必要があります。
株主にとっては「何株増える可能性があるか」だけでなく、いくらで発行され、調達資金が何に使われるのかが重要です。次ページでは会社側の仕訳・税務・登記まで具体的に解説します。



