
第三者割当増資の仕訳・会計処理
新株発行による第三者割当増資では、割当先から払い込まれた資金を資本金などとして処理します。
会社法445条では、株式発行に際して払い込まれた財産の額を原則として資本金としますが、払込額の2分の1を超えない額については資本金に計上しないことができ、その金額は資本準備金に計上します。
例:1,000万円を調達し半分ずつ計上する場合
第三者割当により現金1,000万円の払込みを受け、そのうち500万円を資本金、500万円を資本準備金とした場合の基本的な仕訳イメージは次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,000,000円 | 資本金 | 5,000,000円 |
| 資本準備金 | 5,000,000円 |
全額を資本金に計上する設計であれば、原則的な仕訳イメージは「普通預金1,000万円/資本金1,000万円」となります。
実際には払込日、払込期間、現物出資の有無などによって処理が異なる可能性があるため、具体的な会計処理は個別スキームに合わせて確認する必要があります。
株式発行にかかった費用の会計処理
増資では、登記費用、専門家への報酬、株式発行に伴う諸費用などが発生することがあります。
企業会計基準委員会の実務対応報告第19号では、株式交付費は原則として支出時に営業外費用として処理します。
ただし、企業規模の拡大を目的とした資金調達など一定の財務活動に係る株式交付費については繰延資産に計上することができ、その場合は株式交付時から3年以内の効果が及ぶ期間にわたり定額法で償却する取扱いが示されています。
第三者割当増資の税務|調達したお金に法人税はかかる?
新株発行によって会社が受け入れた払込資金は、商品を販売して得た売上とは性格が異なります。
法人税法22条では、資本金等の額の増減を生じる取引などを「資本等取引」とし、益金計算上、通常の収益取引と区別しています。
したがって、第三者割当増資で受け入れた出資金そのものが、そのまま会社の課税所得となって法人税が課されるわけではありません。
株式交付費は税務上も確認が必要
法人税法施行令では、資本金増加の登記にかかる登録免許税など、自己の株式の交付のために支出する一定の費用を「株式交付費」として繰延資産の範囲に定めています。
会計上の処理と法人税上の処理が常に完全に一致するとは限らないため、税務申告時には別途確認が必要です。
非上場会社では「安い価格で発行すれば得」とは限らない
非上場会社の第三者割当増資では、発行価格の税務上の検討も重要です。
特に同族会社では、増資の方法によって特定の株主などへ経済的利益が移転した場合、相続税法上のみなし贈与が問題になることがあります。
国税庁の相続税基本通達では、同族会社への財産提供や増資などによって株式の価額が増加した一定の場合に、その増加部分について贈与として取り扱う考え方が示されています。また、同族会社の増資に伴う募集株式引受権等についても個別の取扱いがあります。
したがって、親族間の会社やオーナー企業で第三者割当増資を行う場合には、単純に「できるだけ安い株価で家族に発行する」といった判断をせず、適正な株式評価と税務確認が欠かせません。
第三者割当増資をしたら登記が必要
新株を発行すると、通常は会社の発行済株式総数や資本金の額などの登記事項が変わります。そのため、法務局への変更登記が必要です。
払込期日を定めて新株を発行した場合は、原則として変更が生じた日から2週間以内に本店所在地で変更登記を行います。
払込期間を定めた場合には、会社法上、期間中に順次払込みが行われることがありますが、変更登記については払込期間の末日から2週間以内に申請すれば足りる取扱いがあります。
登記の主な添付書類
具体的な添付書類は会社の機関設計や発行方法によって変わりますが、募集株式発行による変更登記では、次のような資料が関係します。
- 株主総会議事録または取締役会議事録等
- 募集株式の申込みを証する書面または総数引受契約書
- 払込みがあったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書類
- その他、発行方法に応じて必要となる書類
商業登記法56条でも、募集株式の発行による変更登記について、募集株式の引受けの申込みまたは総数引受契約を証する書面、払込みを証する書面などが定められています。
第三者割当増資の登記にかかる登録免許税
株式会社の資本金増加の登記にかかる登録免許税は、原則として増加した資本金の額の1,000分の7です。
その計算額が3万円に満たない場合は、1件につき3万円となります。
例:資本金を500万円増やした場合
500万円 × 0.7% = 35,000円となるため、登録免許税は35,000円です。
一方、資本金の増加額が100万円であれば計算上は7,000円ですが、最低額が適用されるため3万円となります。
なお、払込総額すべてを資本金にするとは限りません。会社法445条に基づき一部を資本準備金とした場合には、「調達した金額」と「登記上増加する資本金」は異なることがあります。
自己株式の処分なら「増資」と同じとは限らない
会社法上の募集株式の発行等には、新株の発行だけでなく、会社がすでに保有している自己株式を第三者へ処分する方法もあります。
自己株式の処分では、新たな株式を発行する場合とは異なり、通常は発行済株式総数そのものは増加しません。また、新株発行時のように資本金が増加する取引でもありません。
そのため、一般的に「第三者割当」と呼ばれていても、新株発行なのか自己株式処分なのかによって会計処理や登記事項が異なる点に注意が必要です。
第三者割当増資を確認するときの重要チェックポイント
上場会社の第三者割当増資を確認する場合は、単に「増資した」という情報だけではなく、次の項目をセットで見ると内容を把握しやすくなります。
- 調達金額:いくら調達するのか
- 資金使途:何に使う予定なのか
- 割当先:誰が新株を取得するのか
- 発行価格:現在の株価とどの程度差があるのか
- 発行株式数:新たに何株発行されるのか
- 希薄化率:既存の議決権に対してどの程度増えるのか
- 大株主の異動:支配関係が変わらないか
- ワラントの有無:将来さらに株式が増える可能性があるか
- 過去の増資:短期間に繰り返し資金調達をしていないか
東証では、第三者割当を短期間、目安として6か月以内に複数回実施する場合、希薄化率の算定において一体として取り扱う場合があることも示しています。
よくある疑問を簡潔に整理
Q.第三者割当増資とは簡単にいうと何ですか?
特定の企業や投資家などに新株を引き受けてもらい、会社が資金を調達する方法です。
Q.第三者割当増資をすると株価は下がりますか?
必ず下がるわけではありません。希薄化や発行価格は株価のマイナス要因となる可能性がありますが、財務改善、成長投資、資本業務提携などが評価される場合もあります。
Q.第三者割当増資は悪材料ですか?
一律に悪材料とはいえません。重要なのは、希薄化による既存株主への影響と、調達資金によって期待できる企業価値向上を比較することです。
Q.希薄化率25%とはどういう意味ですか?
東証の算式では、新たに割り当てられる募集株式等の議決権数が、割当前の議決権総数の25%に相当する状態です。既存株主の保有割合がそのまま25%減少するという意味ではありません。
Q.第三者割当増資には株主総会が必ず必要ですか?
必ずではありません。会社法上の非公開会社では原則として株主総会決議が必要ですが、公開会社では通常、取締役会で決定できる場合があります。有利発行や大規模な割当などでは別のルールが適用されます。
Q.非上場会社でも第三者割当増資はできますか?
できます。ただし、非上場株式には市場株価がないため、発行価格の算定や既存株主への影響、税務上のみなし贈与などを慎重に確認する必要があります。
Q.ワラントによる第三者割当との違いは?
新株の第三者割当では株式そのものを発行します。ワラント、つまり新株予約権の第三者割当では、将来株式を取得できる権利を発行し、原則として権利行使時に株式が交付されます。
Q.第三者割当増資で受け取ったお金に法人税はかかりますか?
新株発行による払込金は資本等取引に関する資金であり、通常の売上のようにその払込金自体が法人税の課税所得となるものではありません。ただし、増資に伴う費用や特殊な取引については個別の税務処理が必要です。
まとめ|第三者割当増資は「希薄化」だけでなく資金使途と発行条件まで確認しよう
第三者割当増資は、会社が特定の企業や投資家へ新株を割り当て、自己資本を調達する方法です。返済義務のない資金を確保でき、資本業務提携にも活用できる一方、新株発行によって既存株主の持株比率・議決権比率が希薄化するという特徴があります。
上場会社については、発行価格、希薄化率、割当先、資金使途が特に重要です。東京証券取引所では希薄化率25%以上または支配株主が異動する場合に所定の手続きを求め、希薄化率300%超については一定の場合を除いて上場廃止の対象としています。
一方、非上場会社では市場株価がないため、株式価値の算定、株主総会決議、税務上の利益移転などを慎重に確認しなければなりません。
会社側の実務では、募集事項の決定、払込み、新株発行、会計処理、資本金増加の登記まで一連の手続きがあります。新株発行の場合、払込額の2分の1を超えない範囲を資本金に計上せず、資本準備金にすることも可能です。
第三者割当増資を「増資だから悪い」「資金が入るから良い」と単純に判断するのではなく、発行価格、希薄化率、割当先、資金使途、将来の収益への効果まで総合的に確認することが重要です。
なお、本記事は第三者割当増資についての一般的な情報提供を目的としたものであり、個別企業の株式の購入・売却を推奨するものではありません。また、実際の増資では会社の機関設計、定款、発行価格、現物出資の有無、上場規則、金融商品取引法上の開示、税務関係などによって必要な手続きが異なります。実際に第三者割当増資を実施する場合は、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士などの専門家への確認が適切です。
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