
譲渡制限付株式報酬の税務|課税タイミングはいつ?
譲渡制限付株式の税務で最も重要なのは、株式を受け取った日と、所得税が課税される日が一致しない場合があることです。
特定譲渡制限付株式は原則として「譲渡制限解除時」に課税
国税庁によると、役務提供の対価として交付された一定の要件を満たす「特定譲渡制限付株式」については、原則として譲渡制限が解除された日の価額が給与所得等として課税対象になります。
たとえば、株式交付時には1株1,000円で、その後、譲渡制限が解除された日の価額が1株1,500円だった場合、一定の特定譲渡制限付株式について所得税上の収入金額を考える際は、原則として解除日の価額を基準とします。
上場株式の場合、国税庁の取扱いでは原則として譲渡制限解除日に公表された最終価格などを基に価額を算定します。
所得区分は必ず「給与所得」とは限らない
会社との雇用関係などに基づき交付された特定譲渡制限付株式であれば、譲渡制限解除による利益は原則として給与所得となります。一方、退職に基因して譲渡制限が解除されたと認められる場合には退職所得となることがあります。また、個人事業に関連して交付された場合などは事業所得または雑所得となる場合があります。
そのため「RS=必ず給与所得」と単純に判断するのではなく、株式が交付された理由と解除条件を確認する必要があります。
条件未達で会社が株式を無償取得した場合
勤務条件などを満たさず、会社が対象となる特定譲渡制限付株式を無償取得することとなった場合、その株式については、国税庁の所得税基本通達上、原則として譲渡制限解除による課税は行われません。
譲渡制限付株式の配当金に税金はかかる?
RSは、株式が実際に交付されて株主となっている点がRSUとの大きな違いです。会社が配当を実施し、基準日などの条件を満たして配当を受け取った場合、その配当は通常の株式配当と同様に配当所得として扱われます。
上場株式等の配当については源泉徴収が行われるほか、一定の場合には確定申告不要制度、総合課税または申告分離課税などの選択肢があります。具体的な取扱いは保有状況や申告方法によって異なります。
重要なのは、「株式そのものに譲渡制限があるから、配当も譲渡制限解除まで非課税になる」という仕組みではないことです。株式報酬に対する課税と、株主として受け取る配当に対する課税は分けて考えます。
譲渡制限付株式はいつ売却できる?売却時の税金は?
株式報酬のRSは原則として解除後に売却
契約上の譲渡制限が付されたRSは、その制限期間中、通常は売却・譲渡などができません。勤務継続など所定の解除条件を満たして譲渡制限が解除された後は、上場株式であれば原則として市場で売却できる状態になります。
ただし、役員や従業員には金融商品取引法のインサイダー取引規制が適用される可能性があります。会社の未公表の重要事実を知っている場合には売買できないことがあり、社内規程による売買禁止期間が設けられているケースもあります。
売却時は解除時の価額が取得費になる
特定譲渡制限付株式については、原則として譲渡制限が解除された日における価額が税務上の取得価額となります。
その後株式を売却した場合は、概ね「売却価額-取得費-売却に要した費用」などを基に株式の譲渡所得を計算します。このため、解除時に給与所得等として課税された価額そのものが、もう一度すべて譲渡益として課税されるわけではありません。
会社法上の譲渡制限株式は「解除されれば自由に売れる」とは限らない
ここでも2種類の「譲渡制限」を区別する必要があります。報酬契約上の譲渡制限が終了しても、その株式自体が会社法上の譲渡制限株式であれば、第三者への譲渡について会社の承認が必要となる場合があります。
会社法では、譲渡制限株式の株主が第三者へ譲渡しようとするとき、会社へ承認請求をする制度が定められています。会社が承認しない場合には、一定の手続の下で会社または指定買取人による買取りが問題となることもあります。
譲渡制限付株式の法人税|会社側の損金算入時期
特定譲渡制限付株式を役務提供の対価として交付するケースでは、法人税法上、原則として対象者において給与等課税額が生ずることが確定した日に役務提供を受けたものとして取り扱われます。
したがって、典型的な特定譲渡制限付株式では、対象者側で課税が生じる譲渡制限解除時と、会社側の法人税上の費用帰属時期が関係します。
役員報酬の場合は法人税法34条にも注意
役員に交付する株式報酬は、単に「報酬だからすべて損金になる」わけではありません。法人税法上、役員給与には定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与などのルールがあり、要件を満たさない役員給与は損金不算入となることがあります。
特定譲渡制限付株式については、将来の役務提供に係る一定のものなど、事前確定届出給与に関する税務署への届出が不要となる類型も国税庁から示されています。ただし、株主総会等の決議時期や交付時期、株式の種類など複数の要件があるため、制度導入時には個別確認が欠かせません。
税務上の損金算入時期と会計上の費用計上時期は一致するとは限りません。次ページでは、自己株式を使う場合の会計処理と、解除条件・定款の重要ポイントを整理します。

