譲渡制限付株式とは?株式報酬の仕組み・税金・売却・会計処理・RSUとの違いまでわかりやすく解説

譲渡制限付株式の会計処理はどうなる?

会計処理は、株式を交付する方法や契約内容によって異なります。特に、会社法202条の2に基づき取締役等へ金銭の払込み等を要しない株式を交付する取引については、企業会計基準委員会の「実務対応報告第41号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」が重要です。

事前交付型では勤務期間などに応じて報酬費用を計上

企業会計基準委員会は、取締役等へ新株を交付する事前交付型について、会社が対象者から取得するサービスを、その取得に応じて費用計上するとしています。

各会計期間の費用額は、株式の公正な評価額を基礎として、対象勤務期間その他の合理的な方法により当期に発生したと認められる額を計上します。そのため、株式を交付した日に全額を一括費用処理するとは限りません。

譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分

会社が保有している自己株式を株式報酬として利用する方法もあります。会社法202条の2が適用される上場会社の取締役報酬では、一定の要件の下で、金銭の払込み等を伴わず自己株式を処分する仕組みを採用することができます。

実務対応報告第41号の事前交付型で自己株式を処分する設例では、割当日に処分した自己株式の帳簿価額を減額し、同額のその他資本剰余金を減額する処理が示されています。その後、対象勤務期間に応じて報酬費用を計上し、それに対応する金額をその他資本剰余金として計上します。

また、条件未達によって株式を無償取得した場合には、その対象部分について自己株式を再び計上する処理が示されています。

ただし、この会計処理は会社法202条の2に基づく無償交付取引についてのものです。金銭報酬債権を現物出資する方式など、別のスキームまで同じ仕訳になるとは限りません。制度の法的構成を確認した上で適用する会計基準を判断する必要があります。

譲渡制限の解除条件とは?「譲渡解約」と何が違う?

実務では「譲渡解約」というより、通常は「譲渡制限の解除」という表現が使われます。

解除条件として代表的なのは、次のようなものです。

  • 一定期間、取締役・従業員などとして勤務を継続すること
  • 所定の職務執行期間を満了すること
  • 売上、利益、株価など、あらかじめ定めた業績条件を達成すること
  • 退任・退職など所定の時点を迎えること

反対に、自己都合退職など所定の事由が発生した場合には、解除されていない株式を会社が無償取得する内容にすることがあります。どのような退任理由なら解除されるのか、死亡・疾病・会社都合退職の場合をどう扱うのかなどは、制度ごとの契約内容が重要です。

企業会計基準委員会も、権利確定条件として「勤務条件」と「業績条件」を示しており、条件を満たさなかった事前交付型について会社が株式を無償取得することを「没収」と整理しています。

譲渡制限付株式は定款に記載しなければならない?

ここは特に誤解が生じやすいポイントです。

会社法上の譲渡制限株式なら定款の定めが必要

株式そのものについて、「譲渡による取得には会社の承認が必要」とする会社法上の譲渡制限を設ける場合には、定款上の定めが必要です。全株式を譲渡制限株式とすることも、種類株式の一部について譲渡制限を設けることも制度上可能です。

株式報酬としてのRSは「定款上の譲渡制限」とは別問題

一方、上場会社が役員等へ交付する一般的なRSでは、通常の普通株式そのものを会社法上の譲渡制限株式に変えるのではなく、対象者との契約によって一定期間の譲渡を制限する設計があります。

したがって、「RS制度を導入するなら、必ず会社の普通株式全部を譲渡制限株式として定款に記載しなければならない」という理解は正確ではありません。もっとも、役員報酬として導入する場合には会社法361条による報酬決議など、制度に応じた会社法上の手続が必要になります。

導入企業・受給者が確認しておきたいチェックポイント

  • RSなのかRSUなのか:株式が最初から交付されるのか、将来交付されるのかを確認する。
  • 解除条件:勤務期間、業績条件、退職・退任時の扱いを確認する。
  • 無償取得条件:どのような場合に株式を会社へ戻すことになるのか確認する。
  • 課税日:特定譲渡制限付株式に該当する場合、原則として解除日の課税額を確認する。
  • 源泉徴収と納税資金:株式報酬は現金を受け取らない一方で税負担が生じる可能性がある。
  • 売却ルール:譲渡制限解除だけでなく、インサイダー取引規制や社内売買規程も確認する。
  • 会社側の税務:役員給与の損金算入要件を確認する。
  • 会計処理:新株発行、自己株式処分、事前交付、事後交付など取引形態を区別する。

よくある疑問を簡潔に整理

Q.譲渡制限付株式はすぐ売れますか?

契約上の譲渡制限期間中は通常売却できません。解除後も、会社法上の譲渡制限、インサイダー取引規制、社内規程などを確認する必要があります。

Q.株式をもらった瞬間に所得税がかかりますか?

税法上の要件を満たす特定譲渡制限付株式であれば、原則として交付時ではなく譲渡制限解除時に給与所得等として課税されます。

Q.譲渡制限中でも配当金は受け取れますか?

実際に株主となっており、会社が配当を実施して基準日などの条件を満たしていれば、譲渡制限中でも配当を受け取ることがあります。受け取った配当は通常、配当所得として課税対象になります。

Q.RSとRSUは同じですか?

同じではありません。一般的なRSは株式を先に交付して譲渡を制限する仕組みですが、RSUは条件達成後に株式等を受け取る権利として設計されます。

Q.会社側はRSをすべて損金にできますか?

一律ではありません。特に役員報酬については法人税法上の損金算入要件があり、制度設計によって取扱いが変わります。

まとめ|譲渡制限付株式は「交付・解除・売却」の3段階で考えるとわかりやすい

譲渡制限付株式を理解するときは、「株式が交付される時点」「譲渡制限が解除される時点」「解除後に株式を売却する時点」を分けて考えることが重要です。

特定譲渡制限付株式では、原則として譲渡制限解除時に給与所得等の課税が生じ、その解除日の価額が後の売却時に取得費となります。配当を受け取れば配当所得の問題も生じます。また、会社側では法人税上の役員給与規制と会計上の費用計上を別々に確認する必要があります。

さらに、会社法上の「譲渡制限株式」と報酬契約上の「譲渡制限付株式(RS)」は異なる概念です。定款、株主総会決議、割当契約、解除条件、税務・会計処理を一体として確認することが、制度を正しく理解するうえで欠かせません。

なお、本記事は一般的な制度を解説したもので、個別の契約に対する法律・税務・会計上の判断を示すものではありません。実際の導入、役員報酬の損金算入、確定申告、源泉徴収、退職時の取扱いなどについては、契約書・株主総会決議・対象者の状況によって結論が異なる可能性があるため、税理士、公認会計士、弁護士等の専門家への確認が適切です。

<参考サイト>
e-Gov法令検索 / 国税庁 / 経済産業省 / 企業会計基準委員会(ASBJ) / 財務省