
立会外取引と立会外分売の違い
「立会外取引」と「立会外分売」は名前が似ていますが、同じものではありません。
立会外分売とは
立会外分売は、大株主などが保有する大量の株式を小口に分け、立会外で多くの投資家へ売却する方法です。
JPXでは、株式分布状況の改善、特に個人株主の増加を図る方法として利用されていると説明しています。実際に、流動性の向上や流通株式比率の改善などを目的とする上場会社が利用しています。
立会外分売の処理にもToSTNeTシステムが使われていますが、ToSTNeT-1の相手方指定による大口取引と同じ取引制度ではありません。
立会外分売では割引価格になることがある
立会外分売では、実施前営業日の終値を基準として一定のディスカウントを行い、分売価格を決めるケースが一般的です。
2026年8月のJPX公表データでも、前営業日終値より低い分売価格で実施された事例が確認できます。
ただし、割引価格で取得できても翌日の市場価格が分売価格を下回らない保証はありません。購入した時点で利益が確定する制度ではない点には注意が必要です。
違いを簡単に比較
| 項目 | 一般的なToSTNeT-1 | 立会外分売 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 大口取引などの円滑な執行 | 大量保有株の小口分売、株主数・流動性の改善 |
| 取引相手 | 取引参加者間で相手方を指定できる | 多数の投資家へ分売 |
| 個人の参加 | 証券会社のサービス内容による | 取扱証券会社から申込可能 |
| 価格 | 所定の価格範囲内で設定 | 前営業日終値から一定程度割り引かれるケースが一般的 |
個人投資家は立会外取引に参加できる?
ToSTNeTは個人専用の通常株式取引画面とは仕組みが異なり、東証へ直接注文を出すのは証券会社などの取引参加者です。
しかし、個人投資家が立会外取引にまったく参加できないという意味ではありません。
立会外分売なら個人でも申し込みやすい
複数の証券会社が個人向けに立会外分売を取り扱っています。証券会社のウェブサイトなどから所定の時間内に申し込み、需要が多い場合は一部または全部が購入できないことがあります。
ToSTNeT-1を利用した個人向けサービスもある
証券会社によっては、ToSTNeT-1を活用し、大株主などからまとめて売却される株式を個人投資家へ提供する「立会外トレード」などの独自サービスを提供しています。
この場合、実施前営業日の終値から一定程度低い価格で購入できるケースがあります。
ただし、これは証券会社が提供する個別サービスであり、すべての証券会社・すべての個人投資家がToSTNeT-1へ自由に注文できるという意味ではありません。
ToSTNeT-3では個人は売り手になれる場合がある
ToSTNeT-3の買い手は発行会社に限定されています。そのため個人投資家が買い手になることはできません。
一方、その会社の株式を保有している株主は、ToSTNeT-3の売り注文を取り扱う証券会社を通じて売却注文を出せる場合があります。
実際の受付可否、申込方法、締切時刻などは証券会社によって異なるため、利用している証券会社の案内を確認する必要があります。
「立会外割引取引」は東証の正式な取引名?
ここは2026年現在、特に注意したいポイントです。
東京証券取引所が公表する現在のToSTNeT取引の正式な区分に「立会外割引取引」という名称の取引制度はありません。
実際には、立会外分売や証券会社が提供するToSTNeT-1利用の立会外トレードなどで、前営業日の終値より一定程度低い価格が設定されることがあります。
そのため、「割引された株式を立会外で買う」という内容そのものが存在しないわけではありません。しかし、知らない投資グループやウェブサイトから「特別な立会外割引取引へ参加できる」と説明された場合には、正式な制度名・証券会社名・金融商品取引業者としての登録を確認することが重要です。
「PM立会外取引」も東証の正式な区分ではない
2026年8月時点でJPXが示しているToSTNeTの正式な取引区分は、単一銘柄取引、バスケット取引、終値取引、自己株式立会外買付取引です。
「PM立会外取引」という名称は、東京証券取引所が公表しているToSTNeTの正式な取引区分にはありません。
「PM」が単に午後を意味するなど、サービス提供者独自の名称として使用される可能性はあります。しかし、「機関投資家だけが利用する特別枠を紹介する」「通常より大幅に安く必ず買える」「買った直後に必ず利益が出る」といった説明が組み合わされている場合は、正式な金融事業者か慎重に確認する必要があります。
SNSで紹介される「特別な立会外取引」には注意
金融庁は2026年にも、SNSを利用した詐欺的な投資勧誘について継続して注意喚起しています。
金融庁へ寄せられた情報では、SNS上の広告などからクローズドなチャットへ誘導し、「先生」「講師」「アシスタント」などが登場して投資を勧め、偽の取引画面で利益が出ているように見せる手口などが確認されています。
特に次のような状況では慎重な確認が必要です。
- LINEなどのグループだけで投資指示が行われる
- 「先生」「アシスタント」から専用口座を作るよう言われる
- 聞いたことのない「立会外割引取引」「PM立会外取引」などへの参加を勧められる
- 「必ず利益が出る」「翌日売れば確実に儲かる」などと説明される
- 通常利用している証券会社ではなく、指定されたウェブサイトやアプリで取引させられる
- 個人名義など不自然な銀行口座へ入金するよう求められる
- 出金時に税金、保証金、認証料などとして追加入金を求められる
金融庁は、投資勧誘を受けた場合には相手が金融商品取引業などの登録を受けているか、金融庁の金融事業者検索で確認するよう呼びかけています。
また、実在する証券会社の名称を使ったなりすましも確認されているため、会社名が実在するという理由だけで信用せず、公式サイトに記載された連絡先やドメインと一致しているか確認することが大切です。
立会外取引を確認するときのチェックポイント
上場企業の適時開示などで立会外取引を見かけた場合は、次の項目を確認すると内容を把握しやすくなります。
- 取引の種類:ToSTNeT-1、2、3、立会外分売などのどれか
- 売買の目的:大株主の売却、資本移動、自己株式取得など
- 取引数量:発行済株式数に対してどの程度か
- 価格:市場価格・終値とどの程度差があるか
- 大株主の異動:大量保有者の持株比率が変化するか
- 今後の売却可能性:さらに大量の売却が予定されていないか
- 自己株式取得の場合:取得目的・取得上限・消却予定など
よくある疑問を簡潔に解説
Q.立会外取引の読み方は?
「たちあいがいとりひき」と読みます。
Q.立会外取引とは簡単にいうと何ですか?
通常のオークション方式による売買立会とは別の方法で証券取引所内において行う取引です。東証ではToSTNeT市場が利用されています。
Q.立会外取引は市場が閉まった後だけ行われますか?
いいえ。ToSTNeT-1は8時20分から18時まで取引でき、通常の立会時間と重なる時間帯があります。「立会外」は単純に営業時間外という意味ではありません。
Q.ToSTNeT-1とは何ですか?
単一銘柄取引やバスケット取引などに利用される立会外取引です。大口取引の市場インパクトを抑えながら売買したい場合などに利用されます。
Q.ToSTNeT-3とは何ですか?
発行会社を買い手に限定した自己株式取得専用の立会外取引です。8時45分に取引が行われ、原則として前営業日の終値などが取引価格になります。
Q.個人投資家も立会外取引へ参加できますか?
東証のToSTNeTへ個人が直接注文するのではなく、証券会社を通じます。立会外分売や一部証券会社の立会外トレードなど、個人向けサービスを利用できるケースがあります。
Q.立会外取引をすると株価は上がりますか?
一概にはいえません。大量売却、自己株式取得、大株主の変更など取引内容によって市場の受け止め方が異なり、その後の株価上昇・下落を保証するものではありません。
Q.立会外分売なら割引されるので必ず利益が出ますか?
いいえ。分売価格が前日の終値より低く設定されても、実施日の市場価格がさらに下落する可能性があります。
Q.「立会外割引取引」は正式な制度ですか?
2026年8月時点で、東証ToSTNeTの正式な取引区分に「立会外割引取引」という名称はありません。立会外分売や証券会社独自の立会外トレードなどとの混同に注意が必要です。
Q.「PM立会外取引」は東証の制度ですか?
JPXが公表している現在の正式なToSTNeT取引区分には「PM立会外取引」という名称はありません。投資勧誘で用いられている場合は、具体的にどの取引所制度を指すのか、運営事業者が登録済みかを確認することが重要です。
まとめ|立会外取引は「時間外」ではなく通常の立会とは別の取引方式
立会外取引とは、通常のオークション方式による売買立会とは別の方法で行われる取引です。東京証券取引所では、ToSTNeT市場を利用して単一銘柄取引、バスケット取引、終値取引、自己株式立会外買付取引などが行われています。
ToSTNeT-1の単一銘柄・バスケット取引は2026年8月現在8時20分~18時まで行われるため、「立会外=15時30分以降だけの取引」ではありません。
大口取引では通常市場への直接的な価格インパクトを抑えやすいというメリットがありますが、取引の事実がその後の需給や投資家心理へ影響する可能性はあります。立会外取引だから株価への影響がなくなるわけではありません。
また、立会外分売は大量保有株を小口化して多数の投資家へ売却する制度で、一般的なToSTNeT-1による大口相対取引とは目的や参加方法が異なります。個人投資家でも証券会社を通じて立会外分売や一部の立会外トレードへ参加できるケースがあります。
特に注意したいのが「立会外割引取引」「PM立会外取引」といった名称です。これらは2026年8月時点の東京証券取引所における正式なToSTNeT取引区分ではありません。SNSなどで「特別価格で確実に利益が出る」といった勧誘を受けた場合は、相手業者の金融商品取引業登録と公式ウェブサイトを必ず確認することが重要です。
立会外取引を理解するときは、「誰が売買するのか」「どのToSTNeT制度を使うのか」「何株をいくらで取引するのか」「その後の株主構成がどう変わるのか」を分けて確認することがポイントです。
本記事は立会外取引に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の株式その他の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。取引制度・公開買付規制・証券会社の取扱条件は変更される可能性があります。実際の取引にあたっては、日本取引所グループ、金融庁、利用する証券会社などの最新情報を確認してください。
日本取引所グループ(JPX) / 東京証券取引所 / 金融庁 / 証券取引等監視委員会 / 日本証券業協会


