立会外取引とは?ToSTNeTの仕組み・時間帯・メリット・株価への影響・立会外分売との違いを解説

自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)とは?

自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)とは、上場会社が自社の株式を立会外で取得するために設けられた東証の取引制度です。

一般的には企業が前営業日に自己株式取得の具体的な方法を公表し、翌営業日の8時45分に取引が行われます。

2026年8月時点では、売り注文の受付時間は8時~8時45分、取引時刻は8時45分です。

ToSTNeT-3の買付価格

ToSTNeT-3の取引価格は、原則として前営業日の終値です。終値がない場合には、最終特別気配値や最終連続約定気配値など、東証が定める基準が用いられます。

そのため、翌朝の市場価格を見ながら自由に買付価格を変更する仕組みではありません。

売り注文が買付予定数より多い場合

ToSTNeT-3では、企業が買おうとしている数量より株主からの売り注文が多くなる場合があります。

その場合、単純な早い者勝ちではありません。東証の定める配分方法によって売り注文が配分されます。JPXの制度では委託注文を優先したうえで、取引参加者ごとに所定の方法で配分します。

したがって、売り注文を出したからといって必ず全数量を売却できるわけではありません。

ToSTNeT-3は現在も実際に利用されている

ToSTNeT-3は過去の制度ではありません。日本取引所グループは現在も自己株式立会外買付取引の実施結果を公表しており、2026年8月にも複数の上場会社が利用しています。

「自己株式立会外取引」はすべてToSTNeT-3?

必ずしもそうとは限りません。

ToSTNeT-3は自己株式取得専用の代表的な制度ですが、東証ではToSTNeT-2の終値取引を利用した事前公表型の自己株式取得も可能です。

企業の適時開示を見る際は、「自己株式取得」という言葉だけで判断せず、ToSTNeT-3なのか、ToSTNeT-2なのか、通常の市場買付けなのかを確認すると取引内容を正確に理解できます。

立会外取引の時間帯を一覧で確認

2026年8月時点の東証ToSTNeTの代表的な取引時間は次のとおりです。

取引主な取引時間
単一銘柄取引(ToSTNeT-1)8:20~18:00
バスケット取引(ToSTNeT-1)8:20~18:00
終値取引(ToSTNeT-2)8:20~8:45、11:30~12:15、15:30~16:30
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)8:45(売注文受付8:00~8:45)

なお、ToSTNeT-1の一部のVWAP取引や決済条件によって取引可能時間が異なります。実際の注文では証券会社やJPXの最新情報を確認する必要があります。

立会外取引のメリット

大口注文による市場インパクトを抑えやすい

立会市場へ非常に大きな売り注文を出すと、買い注文を次々に消化して株価を押し下げる可能性があります。逆に大量の買い注文なら株価を押し上げる場合があります。

ToSTNeT-1では事前に相手方との条件を調整して取引することができるため、立会市場で大量注文を直接執行する場合に比べ、通常市場への直接的な価格インパクトを抑えやすいというメリットがあります。

まとまった数量を一度に取引しやすい

機関投資家や事業法人などが数十万株、数百万株といったまとまった数量を移転したい場合、通常市場では一度にすべて約定できるとは限りません。

立会外取引では相手方と数量などを調整できるため、大口取引を実行しやすくなります。

価格を事前に把握しやすい取引がある

ToSTNeT-2の終値取引やToSTNeT-3などでは、終値を基準とした価格で取引します。そのため、通常の市場で大口注文を出した結果、想定より平均約定価格が悪化するといった価格変動リスクを抑えられる場合があります。

立会外取引のデメリット・注意点

誰でも直接参加できる市場ではない

ToSTNeTへ直接注文を送るのは東証の取引参加者である証券会社などです。個人投資家が東証のToSTNeTシステムへ直接アクセスして相手方を探し、自由に取引するわけではありません。

取引価格がその後の株価を保証するわけではない

終値で立会外取引が成立しても、翌営業日の株価が同じ値段になる保証はありません。

会社のニュース、市場環境、需給などによって翌日の株価が大きく上下する可能性があります。

立会市場への影響が「ゼロ」になるわけではない

ToSTNeT-1は大口注文を直接立会市場へ出す場合の価格インパクトを抑える目的などで利用されますが、立会外取引の存在そのものが株価にまったく影響しないわけではありません。

大株主が大量に株式を売却した事実や、新たな大株主が取得した事実、企業が自己株式を取得した事実などが市場参加者に評価され、その後の通常取引で株価が変化する可能性があります。

立会外取引は株価にどう影響する?

「立会外取引があれば株価は上がる」「大口売却だから必ず下がる」といった決まった法則はありません。

重要なのは取引の目的や規模、売り手・買い手、その後の需給などです。

大量売却の場合

大株主による持分縮小が明らかになると、追加売却への警戒や株式需給の悪化が意識される可能性があります。

一方、政策保有株式などが安定株主から市場参加者へ移転することで、流通株式の増加につながる場合もあります。

自己株式取得の場合

企業による自己株式取得は株主還元策として評価される場合があります。また、取得した自己株式を消却すれば発行済株式総数が減少します。

ただし、ToSTNeT-3を実施したという事実だけを理由に「必ず株価が上昇する」と判断することはできません。取得規模、取得目的、業績、財務状態などを合わせて確認する必要があります。

ブロックトレードとは?立会外取引との関係

ブロックトレードとは、一般に証券会社を通じて大口の注文を相対で行う取引をいいます。

JPXの用語集でも、ブロックトレードは大口注文を相対で行う取引であり、執行コストを抑えるため立会外取引などが利用されることが多いと説明されています。

つまり、ブロックトレードは「大口売買という取引の性格」を示す言葉、ToSTNeTは「実際に取引を成立させる東証の制度・市場」と考えるとわかりやすいでしょう。

なお、ToSTNeT-1の単一銘柄取引自体には最低売買単位から参加できる制度設計があるため、ToSTNeT-1の取引すべてがブロックトレードというわけではありません。

2026年から公開買付け(TOB)ルールも変更

非常に大規模な立会外取引では、金融商品取引法上の公開買付規制も重要です。

2026年5月1日から公開買付制度の改正が施行され、会社支配権に大きな影響を与える買付けに関する基準が見直されました。

主な変更点の一つは、公開買付けが必要となる一定の買付けについて、従来の「3分の1超」を基準とする制度から30%へ閾値が引き下げられたことです。また、市場内の立会取引についても一定の場合に公開買付規制の対象となるよう制度が拡大されました。

ToSTNeTを利用すれば自由に大量取得できるということではなく、取得規模や取得前後の所有割合などによって公開買付けが必要となる場合があります。適用除外もあるため、企業支配に関わる大規模取引では個別の法的確認が必要です。

立会外取引とよく混同されるのが「立会外分売」です。名前は似ていますが、目的も参加方法も大きく異なります。次ページでは個人投資家の参加方法と、近年注意が必要な「立会外割引取引」という言葉まで整理します。