PBRとは?計算方法、1倍割れの意味、PER・ROEとの違いと東証要請を解説

PBRの目安は何倍?1倍だけでは判断できない

PBRでは1倍が一つの目安として広く利用されています。しかし、すべての企業に共通する「適正PBR」はありません。

判断する際は、少なくとも次の3つの比較が必要です。

  • 同業他社との比較:同じ事業構造を持つ企業と比べる
  • 過去の推移との比較:その企業自身の過去5年から10年程度の水準を見る
  • 収益性との比較:ROEや資本コスト、利益成長率と照らし合わせる

東京証券取引所は、各月末の「規模別・業種別PER・PBR」を公表しています。市場全体の数字だけで判断せず、確認時点の業種平均や規模別データを使うことが重要です。

PBRの目安が業種別に異なる理由

業種・事業の特徴PBRの傾向を左右する要因併せて確認したい項目
銀行大きな自己資本が必要で、金利や貸倒れの影響を受けやすいROE、自己資本比率、与信費用、金利環境
保険保有資産や金利、市場価格の影響を受ける修正純資産、資本健全性、保険利益
製造業工場や設備を多く保有し、景気循環の影響を受けるROIC、設備稼働率、受注、営業キャッシュフロー
商社・資源関連資源価格や投資先の価値によって利益が変動する資産価値、資源価格、ネット有利子負債
不動産保有不動産の時価と帳簿価額が異なる場合がある含み益、空室率、金利、NAV、負債比率
電力・ガス設備投資額が大きく、燃料価格や規制の影響を受ける有利子負債、料金制度、燃料費、キャッシュフロー
IT・サービスブランド、人材、ソフトウェアなどが帳簿上の資産に十分表れない場合がある売上成長率、利益率、継続収入、顧客維持率
医薬品・研究開発型企業将来の新製品や研究成果への期待が株価に反映されやすい開発状況、特許期間、研究開発費、製品構成

無形資産が競争力の中心となる企業では、ブランド、人材、顧客基盤、独自技術などが貸借対照表に十分計上されない場合があります。その結果、BPSが小さくなり、PBRが高くなりやすい傾向があります。

PBR1倍割れ銘柄は本当に割安?

PBR1倍割れは、純資産に対して株価が低い状態です。しかし、低い理由を確認せずに「割安株」と判断するのは適切ではありません。

PBRが低くなる主な理由

  • ROEが低く、保有する自己資本を十分に活用できていない
  • 利益が長期的に減少すると予想されている
  • 将来の赤字や資産の減損が懸念されている
  • 多額の現預金や政策保有株式を有効活用できていない
  • 成長戦略や資本政策が投資家に伝わっていない
  • 景気変動の影響を強く受ける
  • 株式の流動性が低い
  • ガバナンスや少数株主保護に懸念がある

低PBR株を見るための確認表

確認項目注目する内容
利益一時的な減益か、構造的な減益か
ROE資本コストを上回る収益性があるか
純資産の内容現預金、不動産、在庫、のれんなどの質
キャッシュフロー本業から継続的に現金を生み出しているか
有利子負債金利上昇や借換えに耐えられるか
成長投資資本コストを上回る利益が期待できるか
経営計画数値目標、期限、進捗が具体的に開示されているか

PBRが高いとどうなる?高い理由と注意点

PBRが高い企業は、帳簿上の純資産よりも高い市場評価を受けています。高いPBRには、次のような理由が考えられます。

  • ROEや利益率が高い
  • 将来の利益成長が期待されている
  • ブランド、技術、顧客基盤などの無形資産が強い
  • 定期課金など安定した収益構造を持つ
  • 経営陣や資本配分への信頼が高い
  • 財務リスクや事業リスクが比較的小さい

PBRが高いこと自体は、企業の問題を意味しません。一方、成長期待が株価に強く織り込まれている場合、決算が期待に届かなければ株価が大きく下落することがあります。

高PBRだから割高、低PBRだから割安と機械的に判断するのではなく、その水準を支える利益と成長性があるかを確認する必要があります。

PBR1倍以下で高配当の銘柄を見る際の注意点

低PBRと高い配当利回りを併せ持つ銘柄は、株価指標上では魅力的に見える場合があります。しかし、配当利回りは株価が下落するだけでも上昇します。

配当の持続性を確認する

  • 本業の利益から配当を支払えているか
  • 営業キャッシュフローが安定しているか
  • 配当性向が過度に高くないか
  • 特別配当や記念配当を通常配当と混同していないか
  • 巨額の設備投資や借入金返済を控えていないか
  • 会社の配当方針に変更がないか

配当利回りが高くても、減配によって受取額が減ったり、株価の下落が配当額を上回ったりすることがあります。PBRと配当利回りだけでなく、利益、財務、事業環境を確認することが重要です。

東証のPBR1倍以下の銘柄はどこで確認できる?

東京証券取引所は、規模別・業種別のPBRや上場会社財務データを定期的に公表しています。また、証券会社や株式情報サービスのスクリーニング機能でも、PBR1倍以下などの条件を設定できます。

ただし、東証が「購入を推奨するPBR1倍割れ銘柄一覧」を公表しているわけではありません。

東証が公表している「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧は、企業が対応を開示したかどうかを示す資料です。株価の上昇や投資成果を保証するランキングではありません。

PBR1倍割れ解消推進ETFとは?

PBR1倍割れ解消推進ETFは、銘柄コード2080で東京証券取引所に上場しているアクティブETFです。

運用会社の説明では、PBR1倍割れ企業を投資対象候補とし、分散投資に加えて議決権行使などのエンゲージメントを通じ、企業価値向上を促す運用を行います。

名称に「解消推進」と付いていますが、組入企業のPBRが必ず1倍を超えることや、ETFの価格が上昇することを保証する商品ではありません。

ETFを確認する際は、次の項目も比較する必要があります。

  • 運用方針と銘柄選定基準
  • 組入銘柄と業種の偏り
  • 信託報酬などの費用
  • 純資産総額と売買高
  • 市場価格と基準価額の差
  • 分配方針

PBR向上ファンドとは?

国内株式を対象とする投資信託には、相対的にPBRが低く、経営改革や資本効率の改善が期待される企業へ投資する商品があります。

一例として、大和アセットマネジメントの日本企業PBR向上ファンド(愛称:ブレイクスルー)があります。2026年7月27日時点で、運用会社の公式ページには新規の買付け申込みを停止している旨が表示されています。

投資信託は、名称に「PBR向上」と記載されていても、元本や運用成果が保証されるものではありません。運用方針、リスク、費用、買付け状況は最新の目論見書や運用会社の情報で確認する必要があります。

PBRレンディングは株価指標のPBRとは別物

「PBRレンディング」は、暗号資産を貸し出すレンディングサービスの名称として使われています。株価純資産倍率を意味するPBRとは別のものです。

暗号資産レンディングでは、利用者が暗号資産を事業者へ貸し出し、契約に基づいて貸借料を受け取ります。銀行預金とは仕組みが異なり、暗号資産の価格変動、貸出先や運営事業者の信用、返還の遅延、途中解約の制限などのリスクがあります。

名称が同じ「PBR」であっても、株式指標の記事や東証のPBR対策とは関係がありません。

東証の要請は「PBR1倍にするため自社株買いをすればよい」という内容ではありません。2026年の更新内容と、企業価値を損なわずPBRを高める方法を次のページで整理します。