
PBRと東証要請|2026年の最新状況
東京証券取引所は2023年3月31日、プライム市場とスタンダード市場の全上場会社に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しました。
対象はPBR1倍割れ企業だけではありません。PBRが1倍を超えている企業も含め、資本コストや資本収益性を把握し、改善計画を開示して、投資家との対話を続けることが求められています。
東証が求めている基本的な流れ
- 資本コスト、ROE、ROIC、PBRなどを使って現状を分析する
- 資本収益性や市場評価が十分かを評価する
- 改善の方針、目標、具体的な取組みを策定する
- 投資家に分かりやすく開示する
- 投資家との対話を踏まえ、毎年継続的に内容を更新する
東証は、PBR1倍割れを、資本収益性が資本コストを下回っていることや、成長性が十分評価されていないことを示す一つの目安としています。
一方で、PBRが1倍を超えれば対応が終了するという考え方ではありません。株主や投資家の期待を踏まえ、さらなる企業価値向上を目指すことが求められています。
2026年4月に要請内容を更新
東証は2026年4月28日、従来の要請を更新し、特に経営資源の適切な配分を中心とする投資家の期待と取組みのポイントを公表しました。
短期的に指標だけを改善するのではなく、事業ポートフォリオの見直し、成長投資、人的資本、研究開発、設備投資、キャッシュアロケーションなどを通じ、継続的に企業価値を高めることが重視されています。
2026年6月末時点の開示状況
| 市場 | 開示・検討中の企業 | 開示内容を更新した企業 |
|---|---|---|
| プライム市場 | 94%・1462社 | 1242社 |
| スタンダード市場 | 56%・877社 | 503社 |
東証は開示企業の一覧を、各月末時点の状況に基づいて翌月15日を目途に更新しています。
PBR1倍割れだけで上場廃止になるわけではない
東証の取組みは、企業に現状分析、計画、開示、対話を求める要請です。PBRが1倍を下回ったことだけを理由に、自動的に上場廃止になる制度ではありません。
上場維持基準には、流通株式数、流通株式時価総額、売買高、純資産などの別の基準があります。PBRと上場維持基準を混同しないよう注意が必要です。
企業がPBRを上げるには?
PBRの計算式だけを見ると、株価が上昇するか、BPSが低下すればPBRは上がります。しかし、企業価値を高めずに帳簿上の数字だけを変えても、持続的な改善にはなりません。
企業価値を伴ってPBRを向上させるには、ROEの改善と将来への市場評価の改善を両方進める必要があります。
1.本業の利益率を改善する
- 価格設定を見直す
- 高付加価値の商品・サービスを増やす
- 不採算事業を改善または整理する
- 生産性を高める
- 固定費や調達費を適正化する
同じ自己資本でも利益が増えればROEが高まり、PBRの改善につながる可能性があります。
2.資産を有効に活用する
- 遊休不動産を売却する
- 政策保有株式を見直す
- 過剰な在庫や運転資金を減らす
- 収益性が低い事業から資金を移す
- 子会社や事業ポートフォリオを再編する
資産を保有しているだけでは企業価値は高まりません。資本コストを上回る利益を得られる事業へ資金を配分することが重要です。
3.成長投資を行う
研究開発、設備、人材、ソフトウェア、M&Aなどへの投資が将来の利益成長につながれば、PERとPBRの上昇要因になります。
ただし、投資額を増やせばよいわけではありません。期待収益が資本コストを上回るか、投資後の進捗を検証できるかが重要です。
4.適切な株主還元を行う
事業に必要な資金と財務の安全性を確保したうえで、余剰資金を配当や自己株式取得に充てる方法があります。
自己株式取得によって発行済株式数や自己資本が減れば、EPSやROE、BPSが変化します。ただし、割高な価格で大量に自社株を購入した場合や、成長投資を犠牲にした場合は、企業価値を損なう可能性があります。
5.成長戦略とリスクを分かりやすく開示する
- 目標とするROEやROIC
- 資本コストに対する認識
- 事業別の収益性
- 投資計画と期待リターン
- 株主還元方針
- 目標の達成時期
- 計画と実績に差が生じた理由
企業に成長力があっても、情報開示が不足していると、投資家が適切に評価できない場合があります。継続的なIRと投資家との対話は、市場評価を形成する重要な要素です。
PBRを機械的に上げる方法には注意が必要
資産の減損だけでPBRが上がる場合
資産を減損して純資産が減ると、株価が変わらなくても計算上のPBRは上昇する場合があります。しかし、資産価値が失われているため、企業価値が向上したとはいえません。
借入金を増やしてROEを高める場合
借入金を増やして自己資本を小さくすれば、ROEが高くなることがあります。ただし、利払い負担や財務リスクも増加します。ROEだけでなく、ROIC、有利子負債、自己資本比率も確認する必要があります。
一時的な還元だけに頼る場合
増配や自己株式取得は株主還元として有効な場合がありますが、利益成長が伴わなければ効果が長続きしない可能性があります。東証も、短期的な指標改善だけでなく、経営資源の適切な配分による持続的な成長を重視しています。
PBRを使って銘柄を比較する7つの手順
- PBRを同業他社と比較する
- 過去のPBR推移を確認する
- ROEが資本コストを上回っているか確認する
- PERと利益成長率を確認する
- 純資産を構成する資産の質を確認する
- 配当と自己株式取得の持続性を確認する
- 東証要請への対応内容と実績を確認する
PBRが低いことは、候補を絞り込む入口にはなります。しかし、PBRだけで将来の株価や投資成果を判断することはできません。
まとめ|PBRは1倍より「なぜその水準なのか」が重要
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍で取引されているかを示す株価純資産倍率です。「株価÷BPS」または「時価総額÷自己資本」で計算できます。
PBR1倍割れは、株価が会計上の純資産を下回る状態です。ただし、割安で放置されている場合だけでなく、低いROE、利益減少、資産価値への懸念、成長戦略の不足などが反映されている場合があります。
PBRの目安は業種によって異なります。同業他社や過去の水準と比較し、PER、ROE、ROIC、キャッシュフロー、有利子負債、配当の持続性などを併せて確認することが重要です。
東証は2026年4月、資本コストや株価を意識した経営に関する要請を更新しました。PBRを機械的に1倍へ引き上げるのではなく、成長投資、事業再編、資産活用、株主還元、情報開示を通じて、継続的に企業価値を高めることが重視されています。
投資に関する注意事項
本記事はPBRなどの株価指標や関連制度について一般的な情報を提供するものであり、特定の株式、ETF、投資信託、暗号資産サービスの利用や売買を推奨するものではありません。金融商品には価格変動、元本割れ、為替変動、信用、流動性などのリスクがあります。実際の判断では、最新の決算資料、目論見書、契約条件、手数料、リスク説明を確認してください。


