
立会外取引は、大口の株式売買や企業による自己株式取得などで利用される取引方法です。しかし、「立会外なら市場が閉まった後だけ取引するのか」「ToSTNeT-1・2・3は何が違うのか」「個人投資家も参加できるのか」「立会外分売やブロックトレードとは同じなのか」といった疑問も少なくありません。さらに近年は「立会外割引取引」「PM立会外取引」など、東京証券取引所の正式な制度名ではない表現を使った投資勧誘もみられるため注意が必要です。本記事では、2026年8月時点の日本取引所グループ(JPX)・金融庁などの公表情報を基に、立会外取引の仕組みをわかりやすく整理します。

この記事の目次
- 立会外取引とは何か・読み方
- 「立会外=市場が閉まった後」とは限らない理由
- ToSTNeT-1・ToSTNeT-2・ToSTNeT-3の違い
- 立会外バスケット取引の仕組み
- 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)とは
- 立会外取引のメリット・デメリット
- 立会外取引が株価へ与える影響
- 立会外取引と立会外分売の違い
- ブロックトレードとの関係
- 個人投資家は立会外取引に参加できるか
- 「立会外割引取引」「PM立会外取引」の注意点
立会外取引とは?読み方は「たちあいがいとりひき」
立会外取引の読み方は「たちあいがいとりひき」です。
証券取引所の通常の売買立会、つまり多数の注文を価格優先・時間優先などのルールに従って成立させるオークション方式の取引とは別の仕組みで行われる取引を指します。
東京証券取引所では、立会外取引のための市場としてToSTNeT(Tokyo Stock Exchange Trading NeTwork System)が設けられています。JPXによると、ToSTNeTは大口取引やバスケット取引など、通常の立会市場では円滑な執行が難しい取引へ対応する目的などで利用されています。
「市場内立会外取引」と呼ばれることもある
ToSTNeTは東京証券取引所が運営する市場で行われる取引であり、一般に「市場内立会外取引」と表現されることがあります。
一方、金融商品取引法上の開示書類などでは、制度や記載欄の目的に応じて「市場外」として取り扱われる場面もあります。そのため、単に「市場内」「市場外」という言葉だけで取引制度を判断せず、何の法令・書類上の区分なのかを確認することが重要です。
立会外取引は「立会時間外取引」と同じ意味?
立会外取引は「通常の取引時間が終わった後の売買」と説明されることがありますが、現在の東証制度を正確に理解するには注意が必要です。
2026年8月時点で東証の現物株式の通常の立会時間は、原則として前場9時~11時30分、後場12時30分~15時30分です。
一方、ToSTNeT-1の単一銘柄取引やバスケット取引は8時20分~18時に行われます。
つまり、9時~11時30分や12時30分~15時30分には、通常の立会市場とToSTNeT市場の取引時間が重なる部分があります。
「立会外」とは、単に時計上の立会時間外を意味するのではなく、通常のオークション方式による売買立会とは別の市場・方法で取引するという意味だと理解すると正確です。
ToSTNeTの仕組み|主な4種類を理解しよう
東京証券取引所のToSTNeT市場では、主に次の取引が行われています。
- 単一銘柄取引
- バスケット取引
- 終値取引
- 自己株式立会外買付取引
一般的には、単一銘柄取引・バスケット取引がToSTNeT-1、終値取引がToSTNeT-2、自己株式立会外買付取引がToSTNeT-3と呼ばれています。
ToSTNeT-1|単一銘柄取引
単一銘柄取引では、相手方となる取引参加者、銘柄、数量、決済日などを指定して注文し、条件が一致すると売買が成立します。同じ取引参加者内で売りと買いを組み合わせるクロス取引も可能です。
取引価格には一定の範囲があり、原則として立会市場の直近取引価格の上下7%以内です。ただし、直近価格の7%が5円未満となる場合には、上下5円以内となります。
通常の市場へ非常に大きな売買注文を一度に出すと価格形成へ大きな影響を及ぼす場合があります。ToSTNeT-1を利用することで、こうした大口取引を立会市場とは別の仕組みで執行できます。
なお、制度上の売買単位は最低単位から可能であり、「ToSTNeT-1は必ず何億円以上でなければ利用できない」という仕組みではありません。
ToSTNeT-1|立会外バスケット取引
バスケット取引は、複数銘柄をまとめて一つのまとまりとして売買する方法です。
東証のToSTNeTバスケット取引では、15銘柄以上かつ総売買代金1億円以上が条件となります。
取引価格は、構成銘柄の立会市場の直近取引価格から算出した基準代金の上下5%以内です。
機関投資家が多数の株式から成るポートフォリオをまとめて移す場合などに利用されます。各銘柄を通常市場で一つずつ大量に売買する場合と比べ、執行による市場への影響を抑えやすいことが特徴です。
ToSTNeT-2|終値取引
ToSTNeT-2は、立会市場で成立した終値やVWAP(売買高加重平均価格)などを利用する取引です。
2026年8月時点の終値取引の取引時間は、主に次の3つに分かれています。
- 8時20分~8時45分:前日終値など
- 11時30分~12時15分:前場終値など
- 15時30分~16時30分:当日終値など
終値で売買したい場合や、通常の立会市場で予定していた数量を執行できなかった場合などに利用できます。
ToSTNeT-3|自己株式立会外買付取引
ToSTNeT-3は、買い手を株式の発行会社自身に限定した自己株式取得専用の取引です。
企業が市場で自社株を取得する際に利用されます。一般の投資家がToSTNeT-3を使って株式を「買う」ことはできません。
ToSTNeTの種類によって、誰が参加できるか、値段の決め方、取引時間は大きく異なります。次ページでは特に注目されるToSTNeT-3の仕組みと、立会外取引のメリット・デメリットを詳しく解説します。



