新株予約権とは?仕組み・行使・株価への影響・税金・会計・登記までわかりやすく解説

新株予約権は、あらかじめ決められた条件に従って、将来その会社の株式を取得できる権利です。ストックオプション、資金調達、新株予約権付社債、新株予約権付融資など幅広い場面で利用されます。一方で、「発行されると株価は下がるのか」「行使価格とは何か」「税金はいつ発生するのか」「有償と無償は何が違うのか」など、制度を理解するには会社法・税務・会計を分けて考える必要があります。本記事では、会社法、国税庁、企業会計基準委員会、日本取引所グループなどの公表情報をもとに、新株予約権の基本から実務上の重要ポイントまで整理して解説します。
資料を確認しながら資産や税金について計算するイメージ

この記事の主な内容

  • 新株予約権とは何か、英語ではどう表すのか
  • 新株予約権を行使して株式を取得する仕組み
  • 行使価格と株価への影響
  • 有償・無償の違い
  • ストックオプションとの違い
  • 新株予約権付社債・新株予約権付融資の仕組み
  • 登記事項・登記時期・消却
  • 課税されるタイミング
  • 仕訳・会計処理
  • 評価額の算定方法

新株予約権とは「将来、一定の条件で株式を取得できる権利」

会社法上の新株予約権とは、その権利を行使することによって株式会社の株式の交付を受けることができる権利です。

イメージとしては、会社から「条件を満たした場合、決められた期間内に、決められた条件で株式を取得できます」という権利を受け取る仕組みです。

新株予約権を発行するときには、会社法に基づき、目的となる株式の数または算定方法、行使時に出資する財産の価額または算定方法、行使できる期間などを定めます。

重要なのは、新株予約権を持っているだけでは、原則としてその会社の株主になったわけではないという点です。所定の条件を満たして新株予約権を行使すると、株式を取得することになります。

新株予約権を英語で表すと?

日本法令外国語訳データベースにおける会社法の英訳では、新株予約権は「Share Option」と表されています。

実際の金融・投資の世界では文脈によって「stock acquisition rights」「warrants」などの表現を見ることもありますが、日本の会社法上の用語を正式な法令英訳に合わせて説明するときは「Share Option」が参考になります。

また、新株予約権付社債は法令英訳で「Bonds with Share Option」などと表されています。

新株予約権の行使とは?仕組みを順番に理解しよう

「行使」とは、新株予約権を持つ人が、その権利を実際に使って株式を取得することです。

一般的な流れを簡単に整理すると、次のようになります。

  • 会社が新株予約権の内容や条件を決める
  • 対象者に新株予約権が割り当てられる
  • 行使期間や行使条件を満たす
  • 新株予約権者が行使の手続きを行う
  • 必要な金銭などを払い込む
  • 会社が新株を発行する、または自己株式を交付する
  • 新株予約権者が株主になる

会社法では、新株予約権を行使する際、その新株予約権の内容・数と行使する日を明らかにすることとされています。

金銭を出資する内容の場合は、行使する日に所定の金額を払い込みます。会社法上、新株予約権を行使した人は、原則として行使した日に目的となる株式の株主となります。

新株予約権の「行使価格」とは

行使価格とは、簡単にいえば新株予約権を使って株式を取得するときの基準となる価格です。実務では「権利行使価額」「行使価額」と呼ばれることもあります。

例えば、1株1,000円相当の条件で株式を取得できる新株予約権を持っており、権利行使時の市場株価が1,500円だった場合、経済的には1株当たり500円の差が生じています。

ただし、実際に利益が確定するかどうか、税務上いつ所得として扱われるかは、その新株予約権の種類や取得経緯によって異なります。単純に「株価-行使価格=すぐ手元に残る利益」と考えないことが重要です。

株価が行使価格より低い場合はどうなる?

市場で1株800円で買えるのに、新株予約権を使うと1株1,000円相当の負担が必要であれば、通常は市場で株式を買う方が経済的に有利です。そのため、株価が行使価格を下回っている状態では、新株予約権が行使されにくくなることがあります。

もっとも、行使条件、取得目的、譲渡制限、税務上の扱いなどによって事情は変わるため、株価と行使価格だけで行使の可否を判断できるわけではありません。

新株予約権が株価に与える影響は?「発行=下落」とは限らない

上場会社が新株予約権を発行したときに特に注目されるのが、既存株主への希薄化です。

新株予約権が行使されて新たな株式が発行されれば、発行済株式数が増える可能性があります。その結果、既存株主1人当たりの持分割合などが低下することがあります。

このため、大規模な新株予約権の発行や、行使価額が株価に応じて修正されるタイプの新株予約権については、潜在株式数、希薄化率、行使条件、資金使途などが重要な確認項目になります。

東京証券取引所も、第三者割当やMSCB等について、発行数量や希薄化の規模が合理的か、既存株主に説明できる内容かといった点を重視しています。

ただし、新株予約権が発行されたから株価が必ず下落するわけではありません。市場では次のような要素が総合的に評価されます。

  • 潜在株式数と希薄化率
  • 行使価格とその修正条件
  • 一度に株式が増えるのか段階的に増えるのか
  • 調達した資金の使途
  • 資金調達による事業成長の可能性
  • 会社の財務状況
  • 割当先の性質や売却方針
  • 市場全体の需給や投資家心理

資金調達によって成長投資や財務改善が進み、中長期的な企業価値向上につながると市場が評価するケースもあります。そのため、「新株予約権=悪材料」と機械的に判断するのではなく、開示資料の条件を確認することが大切です。

新株予約権の無償と有償は何が違う?

新株予約権には、発行時に新株予約権そのものの対価を支払う有償発行と、対価として金銭の払込みを要しない形の無償発行があります。

ここで間違えやすいのが、「無償の新株予約権=株式も無料でもらえる」という意味ではないことです。

新株予約権そのものを取得するときの払込金額と、後から新株予約権を行使するときの負担は別の概念です。無償で新株予約権が付与されていても、行使時には定められた行使価額に応じた金銭等の出資が必要になることがあります。

有償新株予約権

新株予約権そのものを取得する際に対価を支払うタイプです。投資家への資金調達目的で発行される場合のほか、一定の条件を付した有償ストックオプションとして役職員等に発行されるケースもあります。

無償新株予約権

新株予約権と引き換えの金銭の払込みを求めないタイプです。役職員へのストックオプションなどで用いられることがあります。

なお、法務・会計・税務では「無償」の意味や取引の実質をそれぞれ確認する必要があります。形式だけで税務処理や会計処理を決めることはできません。

新株予約権とストックオプションは同じものと思われがちですが、実は範囲が異なります。さらに、資金調達に使われる新株予約権付社債や新株予約権付融資にも重要な違いがあります。次のページで整理します。