
株式投資の損失は確定申告した方がよい?
上場株式を売却して損失が出ても、確定申告をしなければ直ちに税金が発生するわけではありません。
しかし、確定申告を行うことで、同じ年のほかの上場株式の利益や一定の配当から損失を差し引ける場合があります。これを損益通算といいます。
複数の証券会社の利益と損失を相殺する
例えば、証券会社Aで50万円の利益、証券会社Bで30万円の損失が出た場合、確定申告によって課税対象の利益を20万円に減らせる可能性があります。
| 口座 | 年間損益 |
|---|---|
| 証券会社A | 50万円の利益 |
| 証券会社B | 30万円の損失 |
| 損益通算後 | 20万円の利益 |
源泉徴収ありの口座で利益に対する税金が引かれていた場合は、申告によって税金の一部が還付されることがあります。
給与所得とは損益通算できない
上場株式の売却損は、給与所得、事業所得、不動産所得などから差し引くことはできません。
また、上場株式等と非上場株式などの一般株式等は、原則として別の区分で計算されるため、自由に損益通算できません。
株式の損失は3年間繰り越せる
その年の上場株式等の利益や配当から差し引いても損失が残った場合、一定の要件を満たせば、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。
例えば、2026年に100万円の損失が発生し、2027年に60万円の利益、2028年に50万円の利益が出た場合、制度上の要件を満たせば次のように控除できます。
| 年 | 利益・損失 | 繰越後の課税対象 |
|---|---|---|
| 2026年 | 100万円の損失 | 損失100万円を繰越し |
| 2027年 | 60万円の利益 | 0円・残り40万円 |
| 2028年 | 50万円の利益 | 10万円 |
繰越控除を利用するには、損失が出た年に確定申告を行い、その後も原則として連続して申告書を提出する必要があります。途中の年に株式取引がない場合でも、申告が必要となることがあります。
株式配当の確定申告は3つの方法から選ぶ
一定の上場株式の配当については、主に次の方法があります。
| 方法 | 主な特徴 | 配当控除 | 売却損との通算 |
|---|---|---|---|
| 申告不要 | 源泉徴収だけで課税を完了する | 利用不可 | 申告による通算不可 |
| 総合課税 | 給与などの所得と合算する | 一定の国内配当で利用可能 | 上場株式の売却損とは通算不可 |
| 申告分離課税 | ほかの所得と分けて20.315%で計算する | 利用不可 | 一定の上場株式の売却損と通算可能 |
総合課税と配当控除
日本国内に本店がある法人から受け取る一定の配当を総合課税で申告すると、配当控除を受けられる場合があります。
総合課税では、配当を給与や年金などの所得と合算し、所得税の累進税率を適用します。そのため、所得が低い人は源泉徴収された税金の一部が還付される可能性があります。
一方、所得が高い人は総合課税を選ぶことで税負担が増える場合があります。合計所得金額が増え、扶養控除や社会保険料などへ影響する可能性にも注意が必要です。
配当控除を利用できない主な配当
- 外国法人の株式から受け取る配当
- 申告分離課税を選択した上場株式の配当
- 申告不要制度を選択した配当
- J-REITの分配金
- 一定の投資信託の分配金
商品や配当の種類によって取扱いが異なるため、支払通知書や年間取引報告書を確認する必要があります。
NISA口座は確定申告が必要?
NISA口座内で取得した対象商品から生じた売却益は非課税であり、原則として確定申告は不要です。
NISA口座で損失が出た場合も、税務上は損失がなかったものとして扱われます。
- 特定口座や一般口座の利益と損益通算できない
- 上場株式の配当から差し引けない
- 翌年以後へ損失を繰り越せない
NISAの配当金は受取方法に注意
NISA口座で保有する上場株式、ETF、REITの配当や分配金を非課税で受け取るには、原則として証券会社を通じて受け取る株式数比例配分方式を選択する必要があります。
発行会社から直接受け取る方式などを選ぶと、NISA口座で保有していても配当が課税扱いになる場合があります。
株式投資で経費にできるもの
個人の一般的な株式投資では、事業所得のように幅広い支出を自由に必要経費へ計上できるわけではありません。
株式の売却益を計算する際、主に差し引ける費用には次のものがあります。
- 株式の購入代金
- 購入時の委託手数料
- 売却時の委託手数料
- 名義書換料など取得に直接必要な費用
- 取得資金に係る借入金利子のうち一定の部分
- 株式売買を内容とする投資一任契約の一定の報酬
パソコンや書籍は自動的に経費にならない
次の支出は、株式投資に利用したという理由だけで、上場株式の譲渡所得等から必ず差し引けるものではありません。
- パソコンやスマートフォンの購入費
- 自宅のインターネット料金
- 新聞、書籍、有料情報サービス
- 投資セミナーの参加費
- 株主総会へ参加するための交通費
- 自宅の家賃や電気代
所得区分や取引の実態によって判断が異なる可能性がありますが、通常の個人投資家がこれらを売却益から一律に控除することは適切ではありません。
株式投資を確定申告するメリット・デメリット
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| メリット | 複数口座の損益通算ができる場合がある |
| メリット | 上場株式の損失を3年間繰り越せる場合がある |
| メリット | 源泉徴収された税金が還付される場合がある |
| メリット | 一定の国内配当で配当控除を利用できる場合がある |
| デメリット | 合計所得金額が増える場合がある |
| デメリット | 国民健康保険料などが増える可能性がある |
| デメリット | 扶養、非課税判定、行政サービスへ影響する場合がある |
| デメリット | 申告書の作成や資料保存が必要になる |
株式投資の確定申告は会社にばれる?
税務署や証券会社が、株式の銘柄、売買金額、利益額を勤務先へ直接通知する制度ではありません。
ただし、確定申告によって住民税額が増え、その住民税が給与から特別徴収される場合、勤務先は従業員の住民税額を確認します。勤務先へ通知されるのは原則として税額であり、株式投資の具体的な取引内容ではありません。
住民税額が給与水準から想定される金額より高い場合、給与以外の所得があると推測される可能性はあります。
源泉徴収ありで申告しない場合
特定口座の源泉徴収ありの所得を申告不要とした場合、所得税等と住民税は証券会社による源泉徴収で完了します。通常、その利益が勤務先の給与に対する住民税計算へ改めて加算されることはありません。
住民税を自分で納付する選択
確定申告書には、給与や公的年金等以外の所得に係る住民税について、「自分で納付」を選択する欄があります。
ただし、所得の種類や自治体の処理方法によって希望どおりに分けられない場合があります。勤務先への情報伝達を完全に防ぐことを保証する仕組みではありません。
申告による還付額だけを見て判断すると、翌年度の国民健康保険料や扶養判定で不利になる場合があります。e-Taxの入力方法と申告後の影響を次のページで確認します。



