現物取引とは? 信用取引との違い・やり方・手数料・税金を初心者向けに解説

現物取引の手数料

売買手数料は証券会社とコースによって異なる

現物取引の手数料は、証券会社、取引金額、注文経路、手数料コースなどによって異なります。

主な料金体系には、1回の約定代金に応じて計算する方式と、1日の約定代金合計に応じて計算する方式があります。所定の条件を満たすと国内株式の売買手数料が0円になる証券会社もあります。

ただし、「売買手数料0円」と表示されていても、すべての費用が無料とは限りません。次の項目を確認してください。

  • 無料になる対象市場と対象商品
  • 電子交付などの適用条件
  • 単元未満株の取引手数料やスプレッド
  • 電話注文や対面注文の手数料
  • 入出金や株式移管に関する費用
  • 外国株式の場合の為替手数料

少額取引では手数料の割合が大きくなりやすい

1回の売買手数料が少額でも、投資金額が小さい場合や短期間に売買を繰り返す場合は、利益に対する費用の割合が大きくなります。

購入時と売却時の両方に手数料がかかるコースでは、往復分の費用を考えて損益を計算する必要があります。

現物取引にかかる税金

課税口座の売却益には原則20.315%の税金

2026年分において、個人が課税口座で上場株式等を売却して得た譲渡益には、原則として合計20.315%の税金がかかります。

  • 所得税および復興特別所得税: 15.315%
  • 住民税: 5%

譲渡益は、単純な売却代金ではなく、売却代金から取得費と売買手数料などを差し引いて計算します。

譲渡益 = 売却代金 – 取得費 – 売買手数料等

特定口座と一般口座の違い

  • 特定口座・源泉徴収あり: 証券会社が損益計算と源泉徴収を行い、口座内の取引は原則として申告不要を選択可能
  • 特定口座・源泉徴収なし: 証券会社が年間取引報告書を作成し、原則として自分で確定申告を行う
  • 一般口座: 取得価額や譲渡損益を自分で計算し、必要に応じて申告する

給与所得者の申告義務などは、年間所得やほかの所得、住民税の扱いによって異なります。個別の税務判断は税務署や税理士などへ確認してください。

上場株式の損失は損益通算できる場合がある

課税口座で上場株式等の譲渡損失が発生した場合、確定申告によって、一定の上場株式等の配当所得と損益通算できる場合があります。

その年に控除しきれない譲渡損失は、所定の確定申告を継続して行うことで、翌年以後3年間にわたり繰り越せる場合があります。

手続きには条件があるため、損失が出た年に申告が必要かどうかを確認してください。

NISA口座で現物取引をする場合

NISAの売却益は非課税

NISA口座の成長投資枠では、対象となる国内上場株式を現物で購入できます。NISA口座内で取得した対象商品の売却益は非課税です。

通常の課税口座とは異なり、利益に対する約20%の税金がかからない点が特徴です。ただし、年間投資枠や非課税保有限度額があり、すべての銘柄が対象になるわけではありません。

NISAの損失は損益通算できない

NISA口座で売却損が発生しても、課税口座の譲渡益や配当と損益通算することはできません。翌年以後へ損失を繰り越すこともできません。

税金がかからないメリットだけでなく、損失が税務上存在しないものとして扱われる点も理解する必要があります。

国内株式の配当を非課税にする受取方法

NISA口座で購入した国内上場株式の配当金をNISAの非課税対象として受け取るには、原則として配当金の受取方法を株式数比例配分方式に設定する必要があります。

銀行口座や郵便局などで受け取る方法を選ぶと、NISA口座で保有する株式の配当でも課税される場合があります。

現物取引を英語で表すと?

株式取引では「cash trading」が一般的

株式の現物取引は、英語でcash tradingまたはcash transactionと表現されます。証拠金を使うmargin tradingと対比する場合は、cash tradingがわかりやすい表現です。

  • 現物取引: cash trading
  • 現物株: cash equitiesまたはphysical shares
  • 信用取引: margin trading
  • 現物口座: cash account
  • 信用取引口座: margin account

spot tradingも「現物取引」と訳されますが、外国為替、商品、暗号資産などで、先物取引と対比するときによく使われる表現です。文脈によって適切な訳語が異なります。

現物取引初心者が注意したいポイント

生活費や近く使う資金を投資しない

現物株には返済期限がなくても、必要な時期に購入価格以上で売却できる保証はありません。生活費、税金、住宅費、教育費など、近い将来に必要な資金を株式へ集中させないことが重要です。

1銘柄へ資金を集中させすぎない

1社だけに資金を集中させると、その会社の業績悪化、不祥事、上場廃止などの影響を大きく受けます。

複数銘柄や異なる業種に分けても市場全体の下落は避けられませんが、特定企業だけに依存するリスクを抑えやすくなります。

注文株数と価格を確認する

1株の価格と100株分の購入金額を取り違えると、予定より大きな注文になる可能性があります。

注文確定前に、銘柄コード、株数、価格、注文区分、概算受渡金額を確認してください。成行注文では、表示されている現在値で必ず約定するとは限りません。

値下がりした理由を確認せず買い増ししない

購入後に株価が下がった際、平均取得単価を下げるため追加購入する方法があります。しかし、業績悪化や財務上の問題が値下がりの原因であれば、買い増しによって損失が拡大する可能性があります。

価格が安くなったという理由だけでなく、企業価値や投資判断の前提が変わっていないかを確認してください。

手数料無料だけで証券会社を選ばない

証券会社を比較するときは、売買手数料に加えて、取扱銘柄、注文機能、情報提供、入出金方法、システムの安定性、問い合わせ窓口なども確認する必要があります。

無料条件が将来も維持されるとは限らないため、最新の手数料表と約款をご確認ください。

現物取引を始める前のチェックリスト

  • 購入代金を自己資金で全額用意した
  • 生活費や近く使う資金を除外した
  • 企業の事業内容と業績を確認した
  • 売買単位と必要金額を確認した
  • 成行注文と指値注文の違いを理解した
  • 売買手数料と適用条件を確認した
  • 同一銘柄の同日売買ルールを確認した
  • 差金決済に該当する注文を理解した
  • 現物取引では空売りできないことを確認した
  • 特定口座・一般口座・NISAの違いを確認した
  • NISAの損失は損益通算できないと理解した
  • 利益確定と損切りの基準を検討した
  • 1銘柄へ資金を集中させすぎていない
  • 注文確定前に銘柄・株数・価格を再確認した

まとめ: 現物取引は差金決済と資金管理の理解が重要

現物取引とは、買付代金の全額を自分で用意し、実際に保有している株式を売却する取引です。信用取引のように資金や株式を借りないため、追証や買方金利は原則として発生せず、保有期限もありません。

一方、投資した株式の価格が下落すれば損失が生じます。企業の経営破綻や上場廃止によって、購入代金の大部分を失う可能性もあるため、「現物取引なら安全」と断定することはできません。

現物取引でもデイトレードはできますが、同一受渡日に同じ資金を使って同一銘柄を「買い→売り→買い」と繰り返すと、差金決済に該当する可能性があります。取引回数に一律の上限はないものの、資金、保有株数、受渡日による制限があります。

また、通常の現物取引では保有していない株式を空売りできません。株価下落時の取引や同一銘柄の回転売買を目的に信用取引を利用すると、金利、貸株料、追証など別のリスクが加わります。

現物取引を始める際は、売買手数料だけでなく、税金、口座区分、注文方法、差金決済のルールを確認しましょう。取引可能な金額ではなく、損失が発生しても生活に影響しない範囲で資金を管理することが重要です。

<参考サイト>
日本取引所グループ(JPX) / 金融庁 / 国税庁 / 日本証券業協会 / e-Gov法令検索 / 証券保管振替機構 / 楽天証券 / SBI証券