富裕層とは?2026年の定義・割合・年収と資産の違い、増税や資産運用を解説

富裕層増税とは?資産1億円で一律増税される制度ではない

「富裕層増税」という言葉は、金融所得、相続、贈与、極めて高い所得などへの課税見直しをまとめて表す際に使われます。ただし、NRIの富裕層基準である純金融資産1億円を超えただけで、所得税率が自動的に上がるわけではありません。

所得税は主にその年の所得を基準として計算し、相続税や贈与税は資産を移転した際に別の基準で計算します。

2026年から申告が始まった高所得者への追加課税

2023年度税制改正によって、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置が導入されました。2025年分の所得から適用されるため、対象者は2026年の確定申告で初めて申告します。

現行制度では、個人の基準所得金額が3億3000万円を超える場合、次の金額を基に通常の所得税額と比較します。

(基準所得金額-3億3000万円)×22.5%

この計算額が通常の方法で計算した基準所得税額を上回る場合、その差額が追加で課税されます。

基準所得金額には、給与や事業所得だけでなく、一定の株式譲渡所得、土地・建物の譲渡所得なども含まれます。基準所得金額が3億3000万円を超えれば必ず追加税額が発生するわけではなく、通常の所得税額との比較が必要です。

2026年度税制改正による課税強化

2026年度税制改正では、極めて高い所得への措置がさらに見直されました。2027年分以後の所得税について、次の変更が適用されます。

項目2025年分・2026年分2027年分以後
特別控除額3億3000万円1億6500万円
比較計算に使う税率22.5%30%

対象となり得る所得水準が引き下げられ、比較計算に使う税率も引き上げられます。ただし、これは保有資産額ではなく、各年の基準所得金額と所得税額を基に判定する制度です。

富裕層に関係する財産の報告制度

財産債務調書

一定の所得と財産を持つ人や、年末時点で10億円以上の財産を持つ人には、財産債務調書の提出義務が生じる場合があります。

主な対象は、次のいずれかに該当する居住者です。

  • その年の12月31日に合計10億円以上の財産を持つ人
  • 退職所得を除く所得が2000万円を超え、財産が3億円以上ある人
  • 所得が2000万円を超え、国外転出時課税の対象となる有価証券などを1億円以上持つ人

国外財産調書

その年の12月31日時点で、合計5000万円を超える国外財産を持つ日本の居住者は、原則として国外財産調書の提出が必要です。一部の非永住者は除かれます。

金融口座を海外に置いただけで、日本の申告義務がなくなるわけではありません。

富裕層の節税対策|合法的な制度利用と脱税は異なる

節税とは、法令で認められた制度や控除を正しく利用して税負担を管理することです。所得や財産を隠したり、実態のない契約を作ったりする行為は、節税ではなく申告漏れや脱税と判断される可能性があります。

一般的に確認される制度

  • NISAによる一定の運用益の非課税
  • iDeCoや企業型確定拠出年金の税制上の取扱い
  • 医療費控除、寄附金控除などの所得控除
  • 贈与税や相続税の基礎控除・特例
  • 事業承継税制などの適用要件
  • 損益通算や繰越控除が認められる取引の確認

利用できる制度は所得、年齢、家族関係、資産の種類によって異なります。相続税対策として資産を移転しても、贈与税が生じたり、相続前贈与が相続財産へ加算されたりする場合があります。

税負担だけを理由に不要な保険、不動産、金融商品を購入すると、節税額を上回る損失や手数料が生じる可能性があります。

富裕層の海外移住|住民票を抜くだけでは決まらない

日本の所得税上の居住者か非居住者かは、住民票だけでなく、生活の本拠がどこにあるかによって判断されます。

国税庁は、住居、職業、資産の所在、家族の居住状況などの客観的な事実を基に住所を判定すると説明しています。複数の国で居住者に該当する場合は、租税条約により恒久的住居、利害関係の中心、常用の住居などを確認します。

海外移住しても日本の税金が完全になくなるとは限らない

非居住者になった後も、日本国内の不動産収入、国内事業、一定の配当など、日本国内で生じた所得に日本の税金が課される場合があります。

移住先の国でも課税される可能性があるため、租税条約や外国税額控除を含めた確認が必要です。

国外転出時課税制度に注意

一定の日本居住者が海外へ移住する際、1億円以上の対象資産を保有している場合には、実際に売却していなくても、含み益に所得税と復興特別所得税が課されることがあります。一般に出国税や国外転出時課税と呼ばれる制度です。

対象資産には、一定の有価証券、未決済の信用取引、デリバティブ取引などが含まれます。対象者の居住期間などにも条件があります。

納税管理人の届出や担保提供など、所定の要件を満たせば納税猶予を利用できる場合がありますが、期限管理や継続的な届出が必要です。

海外口座は各国間で情報交換される

日本は、共通報告基準であるCRSに基づき、参加国・地域の税務当局と金融口座情報を交換しています。

海外の銀行や証券会社へ資産を移しても、口座名義、残高、利子、配当などの情報が日本の税務当局へ提供される場合があります。海外移住や海外口座の利用を、申告を不要にする手段として考えることは適切ではありません。

富裕層に関する情報を見る際の注意点

  • 年収と純金融資産を混同しない
  • 自宅や不動産を含む基準か確認する
  • 個人単位か世帯単位か確認する
  • 調査年と公表年を区別する
  • 個人ブログの体験を全体へ当てはめない
  • 高利回りをうたう無登録業者に注意する
  • 海外移住だけで課税を回避できると判断しない
  • 税制改正の適用年を確認する

まとめ|富裕層は年収ではなく純金融資産で語られることが多い

富裕層に法律上の統一された定義はありませんが、日本では野村総合研究所による「純金融資産1億円以上5億円未満」という分類が広く参照されています。5億円以上は超富裕層です。

最新の国内推計は2023年時点のデータで、富裕層と超富裕層は合計165.3万世帯、全体の約3%でした。2026年時点の新しい国内ピラミッドが公表されたわけではない点には注意が必要です。

年収が高くても負債や支出が多ければ資産は増えず、年収が低くても長期間保有してきた金融資産によって富裕層に該当する場合があります。

資産運用では、株式だけでなく、現金、債券、不動産などを目的に応じて管理することが重要です。生活や趣味も人によって異なり、富裕層だから派手な生活をしているとは限りません。

2026年には極めて高い所得に対する追加課税の申告が始まり、2027年分からは基準がさらに強化されます。ただし、純金融資産1億円を持つ人全員が追加課税の対象になる制度ではありません。

税務・投資に関する注意事項

本記事は富裕層の統計、資産運用、税制に関する一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の投資、節税、海外移住を推奨するものではありません。投資には価格変動、為替、信用、流動性、元本割れなどのリスクがあります。税務上の取扱いは個別事情や法改正によって異なるため、実際の申告、相続、国外転出では税務署、税理士、弁護士などへ確認してください。

<参考サイト>野村総合研究所 / 財務省 / 国税庁 / 金融庁 / e-Gov法令検索 / 外務省 / Capgemini Research Institute / OECD / 日本取引所グループ / 日本年金機構 / Amebaブログ