
譲渡制限付株式は、役員や従業員への株式報酬として利用される一方、「いつ税金がかかるのか」「譲渡制限中に売却できるのか」「RSUとは何が違うのか」「会社側はどのように会計・税務処理するのか」など、理解しにくい点が少なくありません。さらに、「会社法上の譲渡制限株式」と「報酬制度としての譲渡制限付株式(Restricted Stock)」は似た名称でも意味が異なります。本記事では、この違いから課税タイミング、配当、売却、法人税、役員報酬、自己株式の処分、定款との関係まで、公的資料を基に整理して解説します。

この記事の目次
- 譲渡制限付株式とは何か
- 会社法上の「譲渡制限株式」と株式報酬のRSの違い
- 譲渡制限付株式報酬制度のメリット・デメリット
- RSとRSU(譲渡制限付株式ユニット)の違い
- 譲渡制限付株式の税務と課税タイミング
- 配当金・売却時の税金
- 法人税・役員報酬・会計処理
- 譲渡制限付株式報酬としての自己株式の処分
- 譲渡制限の解除条件と定款の関係
譲渡制限付株式とは?まず知っておきたい2つの意味
「譲渡制限付株式」という言葉を理解するとき、最初に重要なのが会社法上の譲渡制限株式と、株式報酬として使われる譲渡制限付株式は必ずしも同じ意味ではないという点です。
1.会社法上の「譲渡制限株式」
会社法上の譲渡制限株式は、株式を他人へ譲渡するときに、発行会社の承認を必要とする株式です。会社法では、株式の全部または一部について、譲渡による取得に会社の承認が必要となる内容を定めることが認められています。
株主がこの株式を第三者へ譲渡しようとするときは、会社に対して承認を求めることができます。承認するか否かは、原則として株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議によって決定します。ただし、定款に別段の定めがある場合は、その定めが適用されます。
2.株式報酬としての「譲渡制限付株式(RS)」
一方、役員・従業員への報酬として利用される譲渡制限付株式は、英語の「Restricted Stock」からRSと呼ばれることがあります。
典型的には、対象者へ実際の株式を先に交付したうえで、「一定期間勤務する」「定められた条件を満たす」といった条件が達成されるまで売却などを制限します。条件を満たせなかった場合には、会社が対象株式を無償取得する仕組みが設けられることがあります。
税法上の「譲渡制限付株式」について国税庁は、譲渡等について制限期間が設けられていることに加え、勤務状況や会社の業績など一定の事由が生じた場合に会社等が株式を無償取得することとなる株式などを定めています。
つまり、「自由に売れない株式」という点は共通していますが、会社法上の定款による譲渡承認制と、株式報酬契約による一定期間の譲渡制限は分けて考える必要があります。
譲渡制限付株式報酬制度はどのような仕組み?
譲渡制限付株式報酬制度では、一定の勤務や職務執行などの対価として役員・従業員へ自社株式を付与します。現金報酬だけではなく、自社株式を報酬の一部に組み込むことで、企業価値の変化を役員・従業員にも意識してもらいやすくすることが目的の一つです。
日本では従来、会社が対象者に金銭報酬債権を与え、その債権を現物出資する形で株式を交付する方法が利用されてきました。また、会社法改正により、上場株式を発行している株式会社については、一定の要件の下、取締役の報酬等として金銭の払込み等を要しない株式の発行または自己株式の処分を行う制度も設けられています。
譲渡制限付株式のメリット・デメリット
会社側の主なメリット
- 企業価値と報酬を連動させやすい:株価が上昇すれば保有株式の価値も上昇するため、株主との利害を共有しやすくなります。
- 中長期的な勤務を促す仕組みにできる:一定期間の勤務を解除条件とすることで、長期的なインセンティブとして活用できます。
- 現金だけに依存しない報酬設計ができる:株式を報酬として活用することで報酬体系の選択肢が広がります。
会社側の主なデメリット・注意点
- 新株発行や自己株式の処分により、既存株主の持分比率などへ影響する可能性があります。
- 株主総会・取締役会等での決議、契約、税務、会計、開示など複数分野の検討が必要です。
- 解除条件や無償取得条件が曖昧だと、退職時などにトラブルにつながるおそれがあります。
受け取る側のメリット・デメリット
受給者は株価上昇による利益を得られる可能性がある一方、譲渡制限期間中は原則として自由に換金できません。また、後述するように譲渡制限解除時に給与所得等として課税されるにもかかわらず、株式そのものから現金が入るわけではないケースがあります。税金を支払うための資金をどのように準備するかも重要です。
譲渡制限付株式(RS)とRSUの違い
「譲渡制限付株式ユニット」は一般にRSU(Restricted Stock Unit)と呼ばれます。RSと名称が似ていますが、大きな違いがあります。
- RS:原則として先に実際の株式が交付され、その株式に譲渡制限などが付されます。
- RSU:一定の勤務条件などを満たした将来の時点で株式等を受け取る権利・ユニットとして設計されるもので、株式が実際に交付されるまでは通常、株主そのものではありません。
企業会計基準委員会の実務対応報告でも、株式を先に交付して条件未達の場合に会社が無償取得する「事前交付型」と、条件達成後に株式を交付する「事後交付型」が区分されています。ただし、実務上「RSU」と呼ばれる制度の法的構成は企業ごとに異なるため、名称だけで税務・会計処理を判断することはできません。
RSとRSUでは、株式をいつ取得するのか、株主としての権利がいつ発生するのかが大きく異なります。次ページでは、特に間違えやすい「税金が発生するタイミング」を具体的に解説します。



